一刀両断 実践者の視点から【第626回】
NEWS高齢夫妻の自慢話
極めて不愉快な気分になった。リゾートホテルに向かうバスの中で二人組の高齢夫妻の大きい声での会話が聞こえてきた。
「ハワイは何度も行ったので飽きちゃった」などの自慢話が次々にされていた。しばらくして病気の話になるとヒソヒソ話となった。
聴いているだけでムカムカしてきた。給食費も滞納して大学へも行けない子供達や借金で逃げ回っている子供達の姿が浮かんできたからである。
経済力で進学が制限されてしまう現実を知っていながら、自分達の欲望の為には湯水のように金銭は使っても、他の為にはシビアになる。
俄か裕福で自慢話をする年寄りにはなりたくもないし、そうした家庭環境で育つ子や孫が貧困の現実を直視できるだろうかと感じてしまう。
「ああした人も居るのよ」と妻は話したが、私の不愉快さはしばらく消えなかった。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)