学校の時数をどうするか 現場からのカリキュラム・オーバーロード論
14面記事大森 直樹 編著 永田 守・水本 王典・水野 佐知子 著
子どもに合わせる視点が鍵
学習やトレーニングの計画を立てるときに、あれもこれもと欲張り過ぎて、結局無理で続かなかったという経験はないだろうか。
「カリキュラム・オーバーロード」(カリキュラムの内容が過多になっていて、学校や教師、生徒に過大な負担がかかっている状態)についてはいろんな意見があろうが、本書は特に、これまで注目されることが少なかった「標準時数」に光を当てる。
中心になるのは、「まず子どもに合った時数を定めてから、それに合わせて内容を定める」という視点だ。子どもたちの生活時間には限りがある。心身の健康を考えれば、実にまともで常識的なアプローチだといえよう。
そうした視点を含め、標準時数と学習指導要領の子どもへの影響をトータルにつかみ、現場からの見解と代案を提起している。大人が押し付ける「こうあるべき」論ではなく、子どもの現実に見合った、無理なく続けられる教育課程でなければ子どもが疲弊する。
また、学習指導要領は「あくまでも参考」と強く打ち出してほしい、「学びの多様化学校」(不登校特例校)でできることが、どうして普通の学校では駄目なのかといった願いや疑問は、おそらく現場の多くの人に共通する思いだろう。
こうした、ごく当たり前の感覚が、次の改訂では生かされることを切に期待したい。
(2640円 明石書店)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)