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サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために【第11回】

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論説・コラム

内容批判歓迎、人格批判NG

 大学で「特別活動論(特活)」を担当する身としては、新型コロナの襲来には参った。知らない同士が、まず互いに顔と名前を知り、やがてどんな人なのかを知って関係を紡いでいく―いかに「密」をつくるかが特活の妙だから。
「今年の「特活」はおもしろくないよ。できれば来年度受講してほしい」
 コロナ初年度、画面越しに集まってくれた学生さんに、本気でそう言った。
 しかし、ケータイさえ持たない、機械オンチのボクでも、オンラインで班活動や模擬授業ができた。「デジタルネイティブ」の学生さんたちのおかげだ。
 結果この年は、「おもしろかった」以外に「この授業に助けられた」「今日一日で人と話したのはこの授業だけです」など、感謝を示す感想が目立った。

 対面であろうとリモートであろうと、特活授業最大の目標は「仲良くなること」。そしてこれは、特活に限らず、すべての授業共通の目標だと思った。「仲良くなる」って、顔で笑いあうだけではない。いろんな考えの人がいる中で、違いを堂々批判できる関係をつくること。そのためにはルールが必要で、根本は、「考え」と「人格」を絡ませない。「考え」は好まなくとも、その考えを持つ「あなた」は嫌いにならない。主張を理解しようと努力しあう。
 とかく「敵」と「味方」に分けたがる。「敵」の悪口を「味方」のなかで力説して喝采を浴びる。最近やたらと過激で口汚いのは、高校生だけじゃない。
「いい会話とは「意見が違う」という出発点から始まり「協力しよう」でしめくくるもの」(中山庸子さん・エッセイスト、イラストレーター)
「私はあなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」(ヴォルテール・フランスの哲学者。※異説あり)
 「主権者教育」ってまったく「生涯教育」だよなあー。実感する、このごろ。
 
 
佐藤功(さとう・いさお。大阪大学人間科学研究科教授)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「国内旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。

サトー先生の「きょういく日めくり」