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改訂2版 生のための学校 デンマークで生まれたフリースクール「フォルケホイスコーレ」の世界

12面記事

書評

清水 満 編著
対話中心、社会性育む教育

 本書は、デンマーク独自の教育機関である「フォルケホイスコーレ」を、創設者の思想や歴史的背景、授業内容など、さまざまな角度から丁寧に紹介した良書である。本書は、約30年前に初版が出版されて以来、長く読み継がれてきたが、今回の改訂では新たにフォルケホイスコーレの校長へのインタビューと二つの留学体験記が追加されている。わが国において、フォルケホイスコーレの存在は注目されているものの、関連図書は決して多くないため、まさに待望の改訂といえる。
 1844年にデンマークの思想家グルントヴィの理念に基づいて設立されたこの学校には、満17歳半以上の人ならば、年齢や国籍を問わず、誰でも入学できる。また、入学試験も単位もなく、卒業時に資格が与えられることもない点に大きな特徴がある。「生のための学校」とも呼ばれる同校では、「書物よりも対話を中心に『生』そのものを学び、社会性を備える」ことが大切にされている。同国内に70校あるフォルケホイスコーレにはさまざまなカリキュラムが用意されており、学校によってその内容は大きく異なる(長期コースに在籍する場合は、原則、寮生活となる)。
 本書はフォルケホイスコーレを知る上での魅力的な案内書であるとともに、学ぶことそのものの意義や大人が学び続けることの意味について問い直す機会を与えてくれる。
(3300円 新評論)
(井藤 元・東京理科大学教授)

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