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多層性のレッスン 絵本・幼年童話・児童文学みちしるべ

14面記事

書評

奥山 恵 著
他者に寄り添う 子ども本の世界

 都立高校教員を経て、今は子どもの本専門店を営んでおられる著者が、「子どもの本の多層性(多様性ではなく)をなんとか言葉にしてみたい」との思いを込めて書かれたもの。
 読み進むにつれ、「世界を『レイヤー(層)』として見る」ということの意味や、「多層性とは想像力だ」という理由に納得、共感されるだろう。評者も、「多様性」という言葉を安易に使っていたかもしれないと自戒した。
 評者としては、「レイヤー(層)」という語を別の表現に言い換えて読者に伝えたい気もするが、ここでは控えたい。
 例えば、「『赤ちゃん絵本』は、赤ちゃんのためにあるというより(中略)大人たちに、赤ちゃんが生きているレイヤーをひらいて見せてくれるものなのではないか」といった記述が大きなヒントになるだろうか。
 りかちゃんが「わたしはにんげんかしら。それともあかいくまかしら」と山の生き物たちに尋ね歩く幼年童話が紹介されている(中脇初枝『あかいくま』)。それぞれの生き物たちから別々の答えを言われるが、りかちゃんは、それらを全部そのままに受け入れる。
 一人一人の人間にとって「学校」「家族」その他の社会のシステムとは何かを問い直してみたら、と子どもの本たちは語り掛ける。
 表題の「レッスン」は、「他者に寄り添うためのレッスン」という意味である。
(1650円 りょうゆう出版)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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