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ウェルビーイングをデザインする 小中学生の非認知能力

16面記事

書評

櫻井 茂男 著
意欲や協働性 どう育てるか

 多くの人々が大谷翔平選手に惹かれるのは、卓越した野球の能力とともに、その人間性にもある。現行の学習指導要領は、これまでの知識を偏重する教育風土からの転換を図るとして、学びに向かう力や人間性等の資質・能力を育むことを大切にしている。これらは非認知能力そのものである。
 本書では、記憶力、思考力、判断力、推理力等の認知能力に対して、非認知能力とは何を指すのか、どのように育てるか、学力やウェルビーイングとの関係はどうかなど、著者が専門とする動機付け心理学の研究を踏まえて解説している。
 ここでは、自己に関する非認知能力として、自己肯定や意欲、メタ認知、自己制御、創造性、レジリエンス(失敗やストレスから立ち直る力)の六つを、他者や社会と関わる非認知能力として、他者信頼や共感性、コミュニケーション、協働性、道徳性の五つを選んで説明。それぞれの用語についてその捉え方、発達と育成の仕方、測定するための具体的な質問項目も提示している。
 VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)といわれる時代。予測できない急な変化に対応できる力を高めるためには、非認知能力が必要であり、認知能力と非認知能力が両輪となって学力もウェルビーイングも高まるという。本書から授業や学校生活で何を大事にすべきかヒントを得ることができる。
(2200円 図書文化社)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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