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授業は変えられる 教科の垣根を越え、子供の学びの事実に基づいて授業を見合い磨き合う

16面記事

書評

嶋野 道弘・青木 芳弘・齋藤 博伸 著
「子供の学びに学ぶ」 中学校変貌の軌跡

 平成29年度に、群馬県榛東村立榛東中学校に校長として赴任した青木氏が教職員を巻き込み取り組んだ「授業改革」の5年余りの軌跡を中心に、識者、教科調査官らと共に新時代が求める「授業」の在り方を指し示した。
 入試を前に磨かれてきた「習得型の授業力向上」。一方で「主体的・対話的で深い学び」の要請に「活用・探究型の授業力」という「新たな『学習観』」が求められている教職員の意識改革を促すため、着手したのは教科の異なる班編成による班単位での授業の見合い、授業研究会の実施や、教職員全員が参加できる「特別の教科道徳」の代表授業を取り入れること。次いで「授業改革委員会」を設置し、「授業改革コーディネーター」を設け、教職員の意見を反映する手だてを講じていく。
 この過程では例えば、どの教科でも共有できる「授業研究5つの視点」が生まれ、「榛東中スタンダード・チェックシート」へと発展。「子供の学びに学ぶ」授業研究スタイルへと変わり、独自の「授業デザインシート」も開発した。また、生徒主導で企画・運営する体育大会開催が教職員の「生徒観を劇的に変えた」。こうした下地の上に生徒を信頼し、自らが学びを追究する「学級総合」が実現していく。
 ダイナミックに変貌する学校、教職員の様子が分かるだけでなく、収めた卒業生たちの声によって、中学校教育の可能性に改めて触れることができる良書である。
(2398円 東洋館出版社)
(矢)

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