日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

教室の罠をとりのぞけ! どの子もつまずかせないユニバーサルデザイン

14面記事

書評

上條 大志 著
「見えない真実」へ気付き促す

 教師は、ある種の「罠」に陥り、悪意なく、無自覚に子どもをつまずかせてしまっているのではないか。「学習活動の楽しさ」「体育の楽しさ」「元気が良い挨拶」など、本書の見出しには、学校教育においてポジティブに語られることの多い文言がズラリと並べられ、それらの教育活動の内に潜む罠が次々と暴き出されてゆく。本書では、ある種の価値観を無条件に肯定することで生じる罠を取り除き、子どもを根拠に教育活動を実践するための数多くのヒントが示されている。罠の除去に当たって、著者は「見えない真実」に注目することの必要性を訴える。例えば、読み書きが苦手な子の中には、語彙力が乏しく黒板に書かれている言葉自体を知らないケースもあれば、文字を音声化することが苦手なケースもあるだろう。そうした「見えない真実」と向き合い、教師と子どもの間に生ずるさまざまなズレ(価値観のズレ、課題のズレ、指導法のズレなど)を回避することが目指される。
 また、本書の後半では、教師が陥りがちな24の罠が示され、その罠に陥らないための具体的な指導や支援の方法が紹介されている。各項目は4ページでコンパクトにまとめられており、非常に読みやすい。気付かぬうちに思い込みが生まれていないか、立ち止まってセルフチェックし、自らの実践の軌道修正を行う上で、本書が提起する視点は大いに役立つだろう。
(2090円 明治図書出版)
(井藤 元・東京理科大学教授)

書評

連載