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教員だった僕がフィンランドで見つけた、「今」を生きるために大切な5つのこと

14面記事

書評

德留 宏紀 著
他国の教育観・人生観に出合う

 本書を貫いているのは、「未来は誰にもわからない。だからこそ、明るい未来を信じ、今を全力で生きていくほかない」という人生観である。著者は、8年間、中学校教員を務めたのち、1年間、ヘルシンキ国際高校でアシスタントティーチャーとして働き、現在は奈良県三宅町立三宅幼児園で園長を務めている。
 本書では著者がフィンランドで出会った人々が登場し、この国での体験が驚きとともに生き生きとつづられている。高校の授業の様子や職員室の風景、教師たちが有している教育観、学びに対する生徒たちの思い、特別支援教育の実態などが紹介されており、非常に参考になる。また、教育の実態だけでなく、この国で暮らす人々の価値観や文化についても丁寧に記されており、本書を通じて等身大のフィンランドの姿に出合うことができる。
 言うまでもなく、日本とフィンランドは教育システムや歴史的・文化的背景が大きく異なるわけだが、本書で語られている内容は、決してわれわれにとって無縁の、遠い国の話ではない。教師同士が教育観を共有することの重要性など、教師の在り方を見つめ直すための具体的なヒントが随所に散りばめられている。「教育観を磨くこと」と「人生観を磨くこと」は切り離すことができず、表裏一体の関係にある。教師である前に、一人の人間としてどう生きるべきか、再考の機会を与えてくれる一冊。
(1980円 教育開発研究所)
(井藤 元・東京理科大学教授)

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