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家庭科教育研究が拓く地平

12面記事

書評

日本家庭科教育学会 編
人生100年時代の生活力育成へ

 今では日常となった家庭科男女共修も、実現に至るまでの紆余曲折は「日本社会のジェンダー文化を背景として、家族・家庭政策を通して求められる人材育成に関わって、推移してきた歴史」である。歩みを振り返るだけでなく、現在を踏まえた未来を、日本家庭科教育学会の会員が「家庭科の基盤としての関連諸科学と社会背景」「家庭科の教科特性を踏まえた学習内容の新展開」「家庭科で育む力と教師の成長」の3部構成で展望した。
 読者は市民性教育、多文化共生社会、ダイバーシティやインクルージョン、子どもの育成環境、ものづくり、SDGs、地域、キャッシュレスなど、時代の変化に対応した学習内容の広がりや豊かさとともに、問題解決型学習など指導の工夫にも触れることができる。
 人生100年時代を生きる生活者としての資質や能力を涵養する可能性を秘めている教科ともいえるが、実際には授業時数は少なく担当教員も非常勤講師が多く、関係者自身が「他教科と比較して目立たない立場におかれている」と言わざるを得ない状況にある。
 「ウェルビーイング」を希求する社会にあって、ワーク・ライフ・バランスは必須だろう。これからの教育は「ワーク」に資する学びと「ライフ」を支える学びの量の調整が必要になるかもしれない。本書が提示する家庭科教育の可能性を共有しながら、「生活を創造する力」の育成にも目を向ける契機にしたい。
(3300円 学文社)
(矢)

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