令和6年通常国会質疑から【第5回】
NEWS国会では、法案審議の他に、議員の提示した課題に対して政府が見解を明らかにする質疑が行われている。今年6月23日に閉会した通常国会のうち、教育関係の一般質疑の模様を紹介していく。3月22日の参議院文教科学委員会では、ヤングケアラー支援のための法制定を踏まえ、養護教諭の重要性に関する質疑があった。
法制定後、文科省の取り組みは
伊藤孝恵議員(国民) 今国会でついに子ども・若者育成支援推進法改正によるヤングケアラーを支援するための法律ができることになりました。育児や介護、通訳や、障害のある兄弟のケアと学業のはざまにいる子供たちの課題には、私は二〇一九年から取り組みまして、二〇二二年には議員立法するなど、各党に協力を呼びかけてまいりました。今日は、ヤングケアラーに係る質問は二十八回目でございます。
今般、政府がヤングケアラー支援に法律上明確な根拠規定を設けるとともに、児童福祉法ではなく子ども・若者育成支援推進法の改正によって十八歳未満と規定されがちだったヤングケアラーを十八歳以上も支援対象としていただいたことに、心から御礼を申し上げます。
そこで、大臣に伺います。
本改正では、今年四月から設置が始まるこども家庭センターがヤングケアラー支援のハブとなることが期待されております。十八歳未満を対象とする児童福祉法によるところのこども家庭センターで、十八歳以上のヤングケアラーも含めて、支援する際の各関係機関連携の具体及び現状の著しい自治体間格差を解消するための方策、さらには、子供自身が自覚しづらい思春期特有の羞恥心から支援ニーズが顕在化しにくいこの課題に、学校現場が、また行政がどのようにアウトリーチして、深刻度のアセスメントを行って適切な支援につなげていくのか、ここが重要になります。
特に文科大臣にお伺いしたいのは、まさにどのように学校現場という子供とのタッチポイントを活用して、そして支援ニーズがある子をアセスメントをできるようにタッチしていくか、そういった文科省の法律制定後の取組について伺いたいと思います。
カウンセラー配置を拡充
盛山正仁文科相 ヤングケアラーにつきましては、欠席が長期化する場合には教職員等が家庭訪問するなど、児童生徒の状況を把握し、関係機関としっかり連携協力をして適切に把握し、必要な支援につなげていくことが重要であると考えております。
これまで把握している事例の中には、教職員が発見したヤングケアラーを、スクールソーシャルワーカーが福祉部局等と連携し支援につなげたものなどがございますので、今後、令和六年度以降、こども家庭センターが各地に開設された際には、そのような連携が期待されているところです。
文部科学省としては、ヤングケアラーの概念や学校における支援事例等について、全国の教育委員会の担当者や教職員を対象とした研修会などで積極的に周知し、理解促進に努めるとともに、令和六年度予算案において、ヤングケアラーを心理的、福祉的に支援するスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置拡充を進めているところです。
法施行後も、引き続き、これらの取組を通じて、学校における支援が必要な児童生徒の早期把握や関係機関との連携による支援の推進に努めてまいりたいと考えています。
養護教諭の再評価を
伊藤孝恵議員 今まで、ヤングケアラーといっても、それはお手伝いだろうって当委員会でも私、やじられたことあるわけですけども、ようやくこの概念が決まりまして、そして、この支援というのが義務化をされるわけであります。
そして、各自治体では、例えば、今大臣が付言していただいたもの以外にも、いじめ調査なんかでも、ヤングケアラーとはというふうに説明を含めて、あなたはヤングケアラー、こういうお手伝いをしていますかみたいな、そういう柔らかい聞き方をして、そして、まず大きく把握をして、そこからアセスメントを行って深刻度の高い子を自治体の支援窓口につなぐというところをしてきたところであります。
今まで支援窓口が、自治体の、本当に格差がありましたので、この法律によって自治体の支援窓口というのを平準化するとともに、子供たちをつなげていかなきゃいけない、アセスメントをしてつなげていかなきゃいけない。そこで、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーというのは、今二つは出していただいたんですけれども、私、養護教諭についても大臣に付言していただきたかったなというところがあります。
というのは、常時学校にいるのは保健室の先生、養護教諭だからであります。なかなか、定員を増やしていただきたいというふうに質問しても色よい返事いただけないわけですけれども、諸外国では、これスクールカウンセラーとかスクールナースというのがそれぞれ心だとか体に特化して子供たちに伴走しておりますけれども、それとは異なって、この日本における養護教諭というのは、子供の心身の健やかな成長を支える専門家として、日常的なケアと教育、健康教育が、同じ人が継続的に行っている。これ、日本独自の制度なんです。だから、諸外国では養護教諭はヨーゴティーチャーとして尊敬を集める存在だったりいたします。
例えば、小学生がだるいとか眠いとか何かおなかが痛いというふうに保健室に曖昧な不調を訴えてくるわけです。そうすると、保健室の養護教諭はじっくり話を聞いてくれて、そして、時に体の手当てだけでなくて、抱え込んでいるそういった心の中の悩みも聞いてくれる。自分のために手間暇を掛けてくれる大人がいるということは、子供にとって大きな支えになるし、なり続けるというふうに思います。
学校教育法において、養護教諭は児童の養護をつかさどると規定されておりまして、文科省は、職務として、保健管理、保健教育、健康相談、保健室経営、地域連携などの保健組合活動を挙げております。これ、地域連携の職務として、ヤングケアラーの自治体支援窓口との接続というのは、私は読み込めるんではないかというふうに思うんですね。
そして、義務標準法に基づく標準定数や複数配置の条件、今までは生徒の人数なわけです。けれども、これやっぱり今、多様化、複雑化する子供たちを取り巻く存在に、取り巻く課題を鑑みて、こういった養護教諭というものの存在をいま一度再認識、再評価して配置していくべきだというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
教職員定数の改善が必要
盛山正仁文科相 伊藤委員が御指摘されているように、今、そのヤングケアラーだけではないと思うんですけれども、学校を取り巻く課題というのがこれまで以上に複雑化している、あるいは困難な問題もいろいろ、学校がというんでしょうか、教育が抱える課題というのが増えているということだろうと思います。それへの対応を図るため、養護教諭を含めて教職員定数の改善を行うこと、これが必要であると、あるいは学校の指導、運営体制の強化充実を図ることが重要であるというふうに我々は考えております。
そのヤングケアラーということに特に着目しているわけではございませんですけれども、文部科学省では、養護教諭の教職員定数につきまして、これまでも配置基準の引下げを行うなど計画的に改善を図ってまいりました。また、近年では、児童生徒の心身の健康への対応を進めるための加配措置も行っており、令和六年度予算案においても改善分を計上しております。
そして、今後ということになると思いますが、複雑化、多様化する現代的な健康課題を抱える児童生徒等に対しよりきめ細かな支援を実施するため、退職養護教諭等を学校に派遣する事業も実施しており、令和六年度予算案においても支援の拡充を行うこととしておりますので、引き続き、養護教諭の定員の改善を含め、その学校における様々な課題に対する対応、こういったものについて検討を進めていきたいと考えます。