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子どもの居場所が崩壊する日 その現状と対応策

16面記事

書評

上條 理恵 著
元補導員が提示する危機への処方箋

 教職経験のある著者が、千葉県警察が募集する「婦人補導員」(現・少年補導専門員)に転身し、25年にわたる非行少年・少女、保護者らとの交流経験を基に子どもの現実を描き、今子どもに何が必要かを提案した異色の本。
 「子どもたちが直面する問題」(第1章)にいじめ、虐待被害、家庭内暴力、パパ活、性非行、薬物乱用、特殊詐欺を取り上げ、データに加え、ケースA~Rまでの18事例から課題を提示し、「子どもたちを取り囲む背景」(第2章)では家庭、地域社会、学校、教師、関係機関、情報空間それぞれが抱える問題点を深掘りしていく。
 警察職員の目を通すと、例えば学校や教師のありようがまた違ったものに見えてくる。
 主体的で協働的な深い学びを目標とするなど一連の流れによって、学校は変わったと学校関係者は言うが、多くの授業は旧態依然とし「興味を引く」「夢中にさせる」は今なお学校教育の課題と指摘。問題発生時、迅速に対処する学校と初動の遅い学校との落差に戸惑いを表明しつつ、学校は大勢の子どもを護り、導く「非営利組織」であり「危機管理組織」ではないからと著者なりの見解を述べている。
 家庭、地域社会、学校、教師、関係機関の処方箋を示す「子どもたちの未来のために」(第3章)では危機の予防、あるいは問題発生後の対処などについて、関係者が耳を傾けるに値する知見を見いだすのではないか。
(1540円 合同会社遊び庭(あしびなぁ出版))
(矢)

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