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高校で広まる教科横断・融合授業 社会課題、多角的に考える

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教科融合授業に取り組む生徒たち=彦根東高校提供

 社会的課題の解決策を複眼的な観点から考えられる能力を育てようと、教科横断や文理融合といった取り組みが高校で広まっている。鍵になるのは教科の枠を超えた教員間の連携だ。

「時間の流れ」「感染症」など教員がチームで教材開発

 滋賀県立彦根東高校で昨年、1年生に「時間の流れ」をテーマにした2時間続きの授業があった。
 担当したのは3人の教員。まずは物理の教員の下、生徒たちが振り子を作り、3分間を正確に測る実験に取り組む。次いで生物の教員が、生物に備わっている体内時計の仕組みを説明。生徒たちが記録した体温のデータから、太陽光の下で一日のリズムをつくっていることを確認した。その後、国語の教員に代わり、現代人の考える「直線的な時間」の概念を批判する小林秀雄の評論などを取り上げた。
 さまざまな教科の切り口から「時間」について考えることを目指した教科融合授業だ。教材開発の担当メンバーの濱川徳行教諭は「現代の複雑な問題を理系・文系の枠を超えて、多角的で俯瞰的に学べる環境が必要だと考えた」と説明する。授業を受けた生徒からは「絶対的なものだと思っていた時間が別の面から見ると相対的なものであると感じた」などと感想が寄せられた。
 彦根東高校は18年間にわたってSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けてきた。令和4年度には、世界で活躍できるリーダーを育てるWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)事業の拠点校となり、英語のコミュニケーションにも力を入れるGS(グローバル・サイエンス)コースを開設。教科融合授業の他、課題研究や海外の大学に倣った「メジャー・マイナー制」(専門性を深める2分野を決めて探究活動する)に取り組んでいる。
 教科融合授業の教材開発は、有志の教員が集まり毎年進めてきた。職員室の出退勤端末の横に回収箱を設置して融合授業のアイデアを募り、6月ごろからチームを結成して検討。夏以降、GSクラスを中心に授業をしている。教材開発チームには毎年20人近くが集まるという。「教材開発を分掌に位置付けてしまうと教員の中に負担感が生まれてしまう。いろいろな教科の先生が集まり、楽しみながら考えられることで続いてきた」と濱川教諭は言う。
 融合授業は毎年二つ教材を開発することを目標にしてきた。実際に、これまでにつくったのは「感染症」や「プラスチックの過去・現在・未来」など五つ。米国大統領選挙からヒントを得て令和4年度に開発した「フェイク・チェック」の授業では国語、数学、物理、情報の教員が集まった。人の認知バイアスやデータ解析、偽情報などを多角的に教え、情報の扱い方や危険性を理解させた。
 今年は政府や企業、大学の関係者でつくるSTEAM教育のプラットフォームの協力も得て「半導体」をテーマにした授業を開発する予定だ。

国はSTEAM教育推進 普通科枠に新学科設置も

 高校での教科横断型の教育は、令和元年に政府の教育再生実行会議が提言。技術の進展に応じた教育の革新として「STEAM教育」を推進することを求めた。中央教育審議会は令和3年の答申で、社会課題に対応した資質・能力を育てるため、教科横断的な視点から教育課程を編成することを提案した。
 その後、令和4年度から始まった普通科改革をきっかけに教科横断型教育は全国に広まりつつある。普通科の枠内で「学際領域」や「地域社会」を学ぶ新学科が設置可能になったためだ。
 兵庫県は本年度、普通科7校に文理探究科やSTEAM探究科などを設置。県立明石高校では、企業や大学から先端技術を学び、データや実証研究に基づく課題発見と探究活動に取り組む。美術科を置く高校として「アート」(デザイン)を生かしたモデルやプランの提案をするという。
 現行の学習指導要領では、数学と理科にわたる探究的科目として共通教科に「理数科」が新設された。校内の指導体制の確立が不可欠な教科横断型教育を学習指導要領でどう展開するのか。次期改訂での扱いも注目される。

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