生徒指導「トラブル対応」の教科書 事例編 教師が直面する49のケース
14面記事吉田 順 著
問題の本質捉え根本的解決目指す
モンスターペアレントについて著者は言う。「教師のやることを好意的に無条件に受け入れてくれる時代は、とうの昔に終わっています。堂々と教師に異論を唱えられる時代ですから『面倒な親』が当たり前なのです」。しかし、「面倒な親はまだモンスターではない」と述べ、「学校の対応によってはモンスターになってしまうのです」と書いている。著者のこのような謙虚な見解は、公平だと共感した。
本書は49件もの具体的な生徒指導事例を取り上げ、それぞれについて、
(1)この問題をどう考えるか
(2)どう対応するか
(3)対応に当たってのポイント
―という3段階を踏み、極めて具体的に解説し助言をしている。
問題事例のレベルによって、(3)の対応に当たってのポイントの解説には長短、深浅の差がある。それは当然だが、いずれも現場の実践に裏付けられ、納得のいく解説、提言がなされていると感じ入った。
本書を読み終えた読者は、単なる対症療法的なハウツーレベルの理解、対処ではなく、問題事例の背後にある深い問題点に気付かされ、本質的、根本的な対応を生み出そうとするに違いない。それこそが著者の願いなのだ。
著者が、先の3段階の解説中、最も重視し、力を入れて書いたのは(1)の「この問題をどう考えるか」という項目だという。私もまた同項の解説に最も深く共感した。
(2640円 学事出版)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)