学び続ける教師を応援する!現職教師が新たな免許を取得する受け皿に
12面記事教育内容の多様化・高度化に伴い、常に学び続ける姿勢を持ち、自身の資質・能力を高めていく教師の姿が求められるようになっている。こうした中、現職教師が働きながら学べる機会を提供し、スキルアップを実現できるのが「大学通信教育」だ。ここでは、メディア授業により、多様な教科・校種の免許を取得できる大学通信教育の魅力を紹介する。
教師も個の力量が問われる時代に
先端技術の高度化が産業・経済・生活に分け隔てなく進み、社会の在り方が劇的に変わる「予測困難な時代」を迎える中で、これからの子どもたちには、そうした課題を自ら乗り越える力をもって豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることが必要になっている。
そのため、文科省は2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿として、学びの在り方を主体的で対話的な深いものにする「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し、すべての子どもたちの可能性を引き出す教育へとシフトすることを挙げている。すなわち、一人一人が目の前の事象から解決すべき課題を見いだし、主体的に考え、多様な立場の者が協働的に議論し、納得解を生み出す教育方法へと転換を図ることだ。
となれば、教師は従来までの知識伝達型のティーチングから、子どもの主体的な学びを支援する伴走者としての役割が求められているのであり、それには問いかけや対話を使って答えを引き出していくコーチング的なスキルがより必要になる。いわば、教師にも個の力量が問われる時代を迎えているといっても過言ではなく、新たな指導方法に向けた学び直しやチャレンジしていく姿勢が問われるようになっている。
特定の強みや専門性を有する教師が望まれる
一方、学校自体も、こうした教育手法の変革を取り入れて教育の質を向上するため、義務教育9年間を見通した指導体制を構築することが急務となっている。そこでは、小学校においては系統的な指導により中学校への円滑な接続を図るとともに、高学年では教科指導の専門性を持った教科担任制を進め、きめ細かな指導に活かすこと。あるいは、中学校の専科教員が小学校で指導するなど、小中学校の連携促進が一層求められている。
また、そうした潮流の中で、小中一貫校や義務教育学校を新設し、より具体的な指導体制を構築したり、幅広い知識の習得や校種を跨いだ経験を持つ教員を積極的に登用したりする自治体も年々増加している。小・中両免許や専門科目の免許を取得している教師の方が学校にとっては柔軟な編成がしやすくなり、免許外担任を解消することにもつながるからだ。
したがって、教師には義務教育期間を見通して指導する力や、教科横断的な視点で学習内容を組み立てる力などがますます必要になっている。事実、教師の異動・採用においては、小・中両免許保有者や複数免許状所持者が優遇されるケースが起きており、教師自身のキャリア形成にとっても、特定の強みや専門性を有することが欠かせなくなっているのだ。
さらに、高等学校においてもSociety5・0時代を生き抜く人材育成に向けて、文理横断・文理融合を進める探究型やSTEAM型教育を強化していくことが目指されており、近い将来には出題科目の見直しなど大学入試にも直結してくることが予想されている。つまり、ここでも教師には幅広い知識やコーチング的な能力を持つことが重要になっている。
現職教師による新たな免許状の取得を促進
文科省ではこのような教師の資質能力の向上とともに、少子化や地域の人口動態の変化により、教師の配置や教科担任の適正化に課題が生じていることを踏まえ、現職教師による新たな免許状の取得を促進している。例えば小学校の免許保有を促すため、小学校と中学校の教職課程の間において科目や専任教員の共通化の範囲を拡大するとともに、小学校免許状の教職課程設置の際の科目開設や専任教員配置の要件の緩和を行っている。
具体的には、3年以上の経験を有する小学校教員が中学校二種免許取得に必要な最低修得単位数は、22単位から14単位に。3年以上の経験を有する中学校教員が小学校二種免許取得に必要な最低修得単位数も同様に縮小するなどし、隣接校種免許状の取得を促進している。
また、小学校の専科担任制度の拡充のための制度改正として、中学校教諭等の免許状を有する者が小学校で担任をできる教科は、従来の音楽、図画工作、体育、家庭といった一部の授業しか受け持つことができなかったものが、全教科・総合的な学習の時間に広がっている。
加えて、文科省が委託する「現職教員の新たな免許状取得を促進する講習等開発事業」では、通信教育を含む大学や教育委員会を対象に、高校情報科など免許外教科担任の縮小に必要な教科や、小中学校免許状併有のための認定講習等の開発・実施を公募によって進めているところだ。特に、高校「情報科」における専任教員の不足は、これからの時代に必要なプログラミングやデータサイエンスといった教育の質を確保するためにも切実な課題となっており、教職経験を考慮した免許状併用の促進は急がなければならない。
通信教育で免許を取得するメリット
こうした中で、「大学通信教育」は現職教師が働きながら多様な教科・校種の免許を取得する機会を提供するとともに、不足する高校の情報や地理・歴史・公民、英語など専科教員を養成する手段として、より一層重要な役割を担うようになっている。
通信教育課程で取得できる教員免許は普通免許状で、小、中、高、特別支援学校、幼稚園教諭、養護教諭、栄養教諭の免許状があり、それぞれ専修、1種、2種に分かれている。免許状取得の代表的なものとしては、
(1)新たに教員免許状を取得する場合
(2)現在持っている免許状を上位の免許状に上進させる場合
(3)現在持っている免許状を基にして同校種の他の教科の免許状を取得する場合
(4)教職経験を有する者が隣接校種免許状を取得する場合
の四つがある。
さらに、近年では「幼保連携型認定こども園」における「幼稚園教諭免許状」と「保育士資格」の両免許取得の場として、受講者が増えている。
現職教師が大学通信教育を利用するメリットは、生活スタイルに合わせて印刷教材とメディア学習によって学べるため、「時間や場所の制約が少ない」ことが挙げられる。しかも、インターネット等の情報通信技術の進化によって、従来のテキストによる添削指導・評価から、動画や音声、資料などを配信し、受講者とのやりとりを行うオンライン授業の比重が高まっている。現在では、通信制学部において卒業に必要な単位数=124単位全てを「メディアを利用して行う授業(インターネット等)」で修得することが可能になっているほどだ。
とりわけ、オンデマンド型とリアルタイム型両方のオンラインを活用した履修の進め方や学力評価の仕方には、長年にわたる試行錯誤や独自のガイドラインなどで質保証を高めてきた経緯があり、一般的な大学とは一日の長がある。
また、大学通信教育は、通常の大学よりも学費が安く設定されており、通学などの交通費もかからないため経済的な負担が少ないのも特徴だ。あわせて、教員免許状の取得に必要な単位数に応じて必要な科目だけを履修することができるため、無駄な出費を抑えることができる。しかも、コロナ禍でオンライン授業に対するスキルも上がった現職教師にとっては、通信教育を受講する敷居も下がっていることも、大学通信教育を選択する動機の一つになっている。
教師が学び続けなければならない理由
教師が学び続ける存在でなければならない理由は、社会が常に変化している中で、学校教育も立ち止まらずに、新しい知識・技能を子どもたちに伝えていく責任があるからだ。現在でいえば、情報技術が飛躍的に発展した時代を生き抜く人材育成として、デジタル技術を指導するスキルを持つことが必要であり、こうした変化を前向きに受け止め、自ら学び続けようとする教師の姿は、子どもたちにとっても重要なロールモデルとなる。
中教審がまとめた「令和の日本型学校教育」を担う教師では、このような学び続ける教師に加えて、現代の複雑化する社会ニーズに対応するために、より多様な専門性を有する教職員集団を構築していく必要があると説いている。つまり、それには教師自身が、全教員に共通に求められる基本的な資質能力を超えて、新たな領域の専門性を身に付けることを指している。
ここで重要になるのが、教師自身が将来どのような知識技能を身に付けたいのかという明確な目標を設定することであり、同時にそれを実現するために必要な質の高い学びを提供する環境になる。
求められる学びの環境とは、
(1)個々の学びが特定のテーマに沿って位置づけられ、そのレベルが整理(例えば、入門~基礎~応用~発展など)されていること。
(2)質の高い学びのコンテンツが豊富に提供され、オンラインで小刻みな形で学ぶといったスタイルも含め、教師が負担なく選択し、受講できるようになっていること。
(3)一定の質保証の仕組みが機能し、学びの成果が可視化され、個人の学ぶ意欲を喚起できていること
などだ。そして、こうした姿を実現する上でデジタル技術を積極的に活用することは不可欠になるとした。
すなわち、そうした点を踏まえても、大学通信教育は過不足がなく、教師が学び続ける場を提供する機関としてふさわしいといえる。
目標をもって学び続けるために
現職教師が働きながら学び続けることは困難だ。しかし、それは一般の会社に勤める社会人にとっても同様で、日々切磋琢磨を繰り返して時代の変化に適応しようと努力している。何も教師だけに背負わされている課題ではない。その意味でも、「新たな免許を取得するために必要な単位を取る」というチャレンジは、自身が学び続ける姿勢を持つ上で目標にしやすいテーマといえる。こうした受け皿として効率的・効果的に学べる大学通信教育は適しており、そこでの学びを通して自身の視野を広げ、キャリア形成につなげ、子どもたちの指導へと活かしてほしい。