令和5年 臨時国会質疑から【第1回】
NEWS 今月13日に閉会した臨時国会のうち、11月30日の参議院文教科学委員会では、部活動の地域移行に関する質疑があった。質問した今井絵理子氏(自民)は、障害がある生徒への対応について質問。文科省からはモデル事業を行っている旨の答弁があった。
部活動の地域移行、実証事業から見える課題は
今井絵理子議員 これまでスポーツ庁は、地域の実情に応じた取組が重要と繰り返し述べられています。既に休日の部活動の地域移行が進んでいる地域では、受皿となる地域クラブ等の協力や地元企業の経済的支援など、地域と一体となった満足なクラブ活動が運営されていると伺っております。しかし、一方で、まだ地域移行が行われていない地域では、受皿となる地域のスポーツ、文化クラブが存在しない、また、存在したとしても、クラブ内での人材確保が困難なことにより積極的な移行が難しいという声も多く耳にいたします。
これまで実証事業を通して見えてきた課題と、その課題に対する対応についてお聞かせください。
運営団体・人材の確保が難しい地域も
スポーツ庁次長 昨年末に策定いたしましたガイドラインでは、令和五年度から七年度までを改革推進期間として位置付けまして、休日の部活動の段階的な地域連携や地域クラブ活動への移行を進め、地域の実情等に応じて可能な限り早期の実現を目指すこととしております。
一方で、ただいま御指摘いただきましたように、地域によっては地域クラブ活動を支える運営団体やあるいは人材、そういったものの確保が困難という状況もあることは事実でございます。
こういったことを踏まえまして、例えば地方自治体が地域クラブ活動の運営団体となるなど、多様な進め方を文科省としても示しているところでございます。また、加えまして、今年度からの部活動の実証事業、これによりまして、運営団体、実施主体の整備や指導者の確保の取組を支援しているところでございます。
文科省といたしましては、引き続き、自治体の多様な取組を支援するとともに、この実証事業を通じまして課題の整理や解決策の検討に取り組んでまいりたいと思います。
費用負担、格差是正を
今井議員 既に地域移行されており、かつ会費を徴収している長崎県長与町の例でいえば、参加費は一か月三千円、困窮世帯に対しては軽減のための補助が行われているとのことです。専門的なスキルを持つ指導員による活動は子供たちの満足度は非常に高いようですが、これまで無料であった部活動に費用が発生することには様々な意見があります。私自身も大きな不安も抱いています。
川崎市の令和四年度の実践研究の例を見ると、東高津中学校では、土日に行われた陸上競技部の生徒の参加費は無料だったんですね。しかし、東高津中学校、高津中学校、西高津中学校、この三校合同で一日だけ行われたバドミントンの講習会では、生徒の参加費は二百円でした。
今後、地域移行を進めるに当たり、地域や指導者、必要な施設の利用料によって、地域移行に伴う経費と負担に大きな差が生じることが想像できます。学習指導要領に基づく根拠を持つ部活動の意義を継承、発展させ、新たな価値を創出するものであるとするならば、部活動と同様に地域クラブ活動においても、子供たちの経済的な負担や、また地域格差を是正すべきと考えます。経済的な理由で子供たちが参加できないことにならないように、参加費や活動で使用する道具であるとか、また楽器などにも支援が必要だと考えられます。
子供のスポーツの機会の確保や居場所づくりのためにも、国として必要な予算を確保し、支援すべきだと考えますが、文科省の御見解をお聞かせください。
困窮世帯を支援
スポーツ庁次長 部活動の地域移行を進める上で、生徒や保護者等の理解を得つつ、可能な限り低廉な会費、これを設定するとともに、経済的事情からスポーツ、文化芸術活動への参加を子供たちが諦めることがないようにすることが極めて重要だと考えております。
このため、令和五年度から開始いたしました部活動の実証事業におきましては、困窮世帯への参加費用負担の支援にも取り組んでいるところでございます。
また、加えまして、自治体にはこの実証事業を活用して、今ほど長与町の話などございましたが、例えば企業と連携した取組を進めていただいている自治体などがございます。例を挙げるとしますと、富山県でございますが、指導者の派遣に加えまして、施設、用具の提供、さらには財政的支援に協力する企業の登録制度というものを整備していると承知しております。
文科省といたしましては、こうした実証事業における取組のこの成果を踏まえまして、今後の支援方策の検討をしっかりと進めていきたいと思います。
推進期間終了後の国庫負担は
今井議員 令和五年度の実証事業では、一自治体当たり国からの委託費として百万円プラス実施部活動数掛ける二十一万円の予算を基本として、生徒からの会費、自治体による補助、地元企業の寄附などと組み合わせて運営されている自治体もあると伺っておりますが、これまで、ほかの事業においても、モデル事業当時は国から手厚い支援が、予算が付くものの、一般事業へと展開する際にはそれら国の支援が縮小あるいはなくなることによって当初の事業目的が達成できないという例を幾つか見てきました。部活動の地域移行について、同じ轍を踏んではならないと考えています。将来的な財政支援の展望が見えない状況では、自治体も積極的に事業実施に踏み切れないという状況もかいま見れます。
非常にお答えにくいことかもしれませんが、この改革推進期間が終了する令和八年度以降の活動について、国の負担の在り方について、文科省の見解をお聞かせください。
取り組み状況踏まえ検討
スポーツ庁次長 令和五年度の実証事業におきましては、各自治体において、国からの委託費に加えまして、今お話ありました受益者負担であったり自治体の自主財源、さらには企業からの寄附、そういったものを組み合わせまして持続的に活動する、そういった仕組みづくりを進めていただいているところでございます。
今後、この検証事業におきまして、持続的な地域クラブ活動の収支構造を含めまして、多様な地域クラブ活動のモデルを構築する取組、これをしっかりと進めてまいりたいと思います。
今お尋ねありました令和八年度以降の具体的な支援方策でございますが、将来にわたり子供たちがスポーツや文化芸術活動に継続して親しむ機会を確保するというこの大事な観点から、まずはこの実証事業をしっかりとやり切りまして、改革推進期間における取組状況や成果等を踏まえて検討してまいりたいというふうに思ってございます。
障害がある生徒への対応は
今井議員 障害のある生徒は、通常学級、特別支援学級に在籍するケースと、特別支援学校に在籍するケースがあります。
スポーツ庁においては、障害のある生徒の運動部活動の地域連携、地域移行にどのように取り組まれているのか、現状と実績を説明していただきたいと思います。
モデル事業を7カ所で
スポーツ庁次長 特別支援学校あるいは特別支援学級の運動、文化部活動の地域連携、地域移行につきましては、生徒のスポーツ、文化芸術活動を誰一人取り残すことなく充実する観点から、地域の活動の場を整備し、将来にわたりその機会を確保するということが重要だと考えております。
このため、スポーツ庁におきましては、今年度から、地方自治体を中心に、特別支援学校等を拠点とするクラブチームあるいは総合型地域スポーツクラブあるいは社会福祉施設等において、生徒の多様な実態に即したスポーツ活動環境を構築するモデル事業を全国七か所で実施しているところでございます。また、加えまして、特別支援学校等の運動部活の地域連携等の実態につきましては、今後、詳細な全国調査を予定しているところでございます。
さらに、障害者スポーツセンターの機能の強化の中で、障害のある方の受入れに関する助言やクラブチームの立ち上げ支援、こういったものの充実を図り、スポーツ環境の整備を促進する、そういった取組も行うこととしているところでございます。
こういった幾つかの取組を組み合わせながら、障害のある人の身近な地域におけるスポーツ、文化芸術環境の充実とともに、特別支援学校等の地域連携、部活動ですね、部活動の地域連携、地域移行のモデル例の創出等、そういったモデルの、いいモデルの横展開、こういったものをしっかりと進めてまいりたいと思います。