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不適切な関わりを予防する 教室「安全基地」化計画

12面記事

書評

川上 康則 編著 武田 信子・村中 直人・荻上 チキ 著
安心空間つくる教師の役割

 「子どもへの不適切な関わり全て」を意味する言葉「マルトリートメント」を教育現場に当てはめ、「違法ではないが、適切ではない指導」が行われていないかと、問題提起した前作『教室マルトリートメント』。その刊行記念として実施した3回シリーズのオンラインセミナーの内容を中心に一冊にまとめた。
 同セミナーは著書『教室マルトリートメント』の問題意識と重なる著作、考えを持つゲスト、回ごとに『やりすぎ教育』の著者でもある武田信子氏(第1章)、『〈叱る依存〉がとまらない』などを書いた村中直人氏(第2章)、いじめ問題にも取り組む評論家・荻上チキ氏(第3章)を迎えて、ミニ講演、対談、チャットでの参加者との対話などが行われている。
 著者の前作への理解を深めるだけでなく、対談相手である識者らの問題意識を共有できる。同時に、識者らとの対話を通し、本書の目的である子どもが安心できる教室空間でもある「安全基地」を創出するための教師の役割、教師にできることを探る。
 なぜ「不適切な指導」に陥ってしまうのかを、教師を取り巻く厳しい環境に目を向けつつ、今までの教師としての習慣を見直し、人間観を磨くなどの対応策を第4章に「処方箋」として提示した。
 結果的に子どもの心を傷つける「指導」に至るには、やむを得ない状況もあると諦める前に、一人一人の教師には、できることがあると静かに呼び掛けている。
(2310円 東洋館出版社)
(矢)

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