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省エネ教育プログラム 授業の実際

9面記事

企画特集

5つのグループに分かれて自身の「エコ宣言」を発表する児童たち

神奈川県・秦野市立大根小学校

 秦野市、東京ガス、秦野ガスは2021年11月に「カーボンニュートラルのまちづくりに向けた包括連携協定」を締結。カーボンニュートラル、レジリエンス、地域共創の観点で三者が連携し、脱炭素社会に関する知見や技術を活用しながらカーボンニュートラルシティの実現を目指している。2023年5月には環境省の「ナッジ手法の社会実装促進事業」に採択され、東京ガスらの開発した省エネ教育プログラムを導入。市内の小学校3校、中学校1校で6ステップからなる授業を6週連続で行った。実践校の一つ、秦野市立大根小学校の4年2組にて加藤敦視教諭が実践したステップ5の授業を取材した。

新聞づくりが省エネ行動を後押し

 本時で行われたのは、プログラムの進行と併せて準備してきた新聞の発表。新聞をつくることで地球環境問題が身近な問題であると気づかせ、発表することで学んだ内容を定着させるのがねらいだ。子どもたちはそれぞれに地球温暖化や省エネの必要性などの観点からテーマを選び、新聞のタイトルに掲げる。次に自身で調べたことや自分にできることを記入、最後に「編集後記」と「わたしのエコ宣言」をまとめる。
 「5つのグループに分かれて発表しましょう。最後に1人2票を投票し、優秀賞を決めます」という加藤教諭の声で発表を開始。ホワイトボードに貼った自分の新聞を、クラスのみんなへ発表する姿は自信に満ちていた。
 テーマは「100年後の地球はどうなる?」「自然破壊って何?」など実に個性的。このプログラムで学習した内容から、好きな分野や興味を持ったことから掘り下げたことがよく分かる。「省エネを知っていますか?」をテーマにした児童は、エコバッグを使うとなぜエコになるのかと、今まで当たり前にしていたことが本当に必要だったのかを振り返っていた。さらに省エネ行動にも種類があることを調べ、エコ宣言では「エコバッグを使いたいと思った」と明記。自ら調べ学習を行ったことで省エネ行動がより自分ごとになり、今後の実生活での実践に向けた第一歩を踏み出した。
 同じ省エネがテーマでも「エコ・クッキング」を切り口にした児童は、調理法のどの部分がエコになっているのかをクイズ形式で友達に問いかけながら説明。
 テーマとして多かったのが地球温暖化の問題。オーストラリアの山火事でたくさんのコアラが犠牲になったことなどの現状を調べ、「このまま温暖化が続けば地球上の水は汚染され、夏の気温は40度以上になってしまう」と危機感をあらわに。「でもまだ希望はある」と自分の言葉で締めくくり、今の自分にできることへつなげていた。
 最後に友達の新聞について感想を述べ合った。イラスト、グラフ、数値を入れていて誰でもわかるように書かれていたなど表現方法についての感想も多く、学んだことをしっかり伝えたいという意志の表れのように感じられた。
 発表が終わり、それぞれの机の上に置かれた新聞を見て回る子どもたち。「自分にはない気づきがいろいろあるね。テーマについて掘り下げて書かれているか、省エネ行動にどう取り組んでいるか、内容をよく見てください」と加藤教諭から声がかかる。新聞を仕上げたことで他者の考え方にもより関心を持てたのだろう。子どもたちのまなざしは真剣だ。
 「来週はいよいよ最後のステップです。プログラムは終わっても学校やおうちでどんな省エネ行動ができるのかを考えてほしいので、みんなでアイデアを出してください。大根小のほかの学年ではこのプログラムをやっていないので、他の学年のみんなにも教えられることがありそうだよね。先生もみんなのアイデアを学校で実現できるようにがんばりたいと思います」と授業後も児童の省エネ行動が継続するよう呼びかけた。

「住宅で省エネ」をテーマに新聞を作成した大根小学校4年2組 吉田健太郎さん
【コメント】簡単なことで省エネができることや冷やすより温めるほうがエネルギーを使うなど初めて知ることがたくさんありました。これからも省エネ行動を続けていきたいです。

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