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自発的・持続的な省エネ行動を促す ナッジを活用した省エネ教育プログラムが本格始動

9面記事

企画特集

調理室でステップ4の節電実験、節水実験の授業を体験する秦野市の教員たち

 東京ガス(株)都市生活研究所は環境省の実証事業の一環として2017年から2020年度にかけ、(株)住環境計画研究所と共同で省エネ行動を定着させるための教育現場向けプログラムの開発に取り組み、2023年度から全国の自治体への導入をスタートさせた。
 このプログラムの内容について、実証後初の実践自治体である神奈川県秦野市で行われた省エネ教育プログラム指導者養成講座と、同市内の小学校の授業を取材した。また、秦野市教育委員会教育長・佐藤直樹氏と東京ガス㈱都市生活研究所・三神彩子所長に次世代育成における省エネ教育の重要性や展望について話を聞いた。

省エネ教育プログラムとは?

6ステップで省エネ行動を喚起・定着

 このプログラムは全6ステップで、1回45~50分の授業を6週間にわたって実施する。省エネ行動の実践や行動の持続を促す構成で、教育現場で容易に導入できる内容となっている。
 ステップ1ではまず電気、ガス、水道のメーターを読み取って記録。環境問題に関心を持ってもらうことからスタートする。ステップ2でいよいよ地球環境問題について学び、省エネ行動意欲をかりたて、お風呂の設定温度を下げるなど、機器の設定でできる8つの行動を実践する。そして各自テーマを決めさせて新聞づくりをスタートする。
 ステップ3では、テレビを見ていないときは電源を消す、シャワーを使う時間を5分以内にするなど、毎日の行動でできる8つの行動を実践する。
 ステップ4から実践活動に進む。エコ・クッキング、節水実験、節電実験、省エネ行動トランプの中から、学校ごとに1つを選んで体験する。このタイミングでの体験学習は、行動をより定着させる成果が期待できるという。ステップ5のテーマは「持続可能な社会に向けて発信するぞ!」。完成させた新聞について発表して友達同士で理解を深め、自身の省エネ行動を確認する。まとめとなるステップ6では「省エネマスター認定証」を配布し、これまでのステップでの取り組みを評価し、省エネ行動を継続することの重要性を確認する。
 全ステップを通して、総合的な学習の時間以外の教科にも関連する内容が含まれていることが分かる。例えばステップ2は社会科で、ステップ4のエコ・クッキングは家庭科で、など教科の横断が可能で、学校ごとにカリキュラム・マネジメントを意識しながら授業計画を立てることができる。

行動経済学の知見「ナッジ」が底流に

 プログラム全般に行動経済学の「ナッジ理論」が取り入れられていることにも触れておきたい。ナッジは「ひじで軽く突く、そっと後押しする」という意味。強制するのではなく、ひじで突いて人々が自発的に望ましい行動を選択するよう促すということを指す。例えば「今週のおすすめ」「人気・売れ筋ナンバーワン」などの表記を目にすると、人は取るべき行動を具体的にイメージすることができ、その行動を起こす可能性を高める効果があるということで、多ジャンルで利用されている。

省エネ教育プログラムの成果

 プログラムの実証には全国43校の小・中・高・大学等、約1万名が参加した。省エネ行動実施率は、受講前は52%程度だったことに対し、受講後は約73%と大きく数値が向上した。注目したいのは、省エネ行動を実践できていた児童生徒の約95%が、プログラム実施直後だけでなく半年後、1年後も省エネ行動を継続できている点だ。また、先の授業を受講した児童生徒の各家庭でのCO2排出量を計測したところ、5・1%の削減効果があった。学校での省エネ教育が家庭のCO2排出量に与える影響を定量的に検証した研究は、日本初である。この成果に基づき、東京ガスに委託して省エネ教育プログラムを実施した自治体・学校には、削減量が記載された「CO2排出量削減証書」が授与される。

特別講座で省エネ教育の指導者を養成

 教員はこの省エネ教育プログラムで授業を行うに当たって、省エネ教育プログラム指導者養成講座を受講する。対象は小・中・高等学校の教員免許を持つ人および大学、短大、専門学校などに所属する教員。受講により省エネ教育プログラム指導者に認定される。
 2023年9~11月に児童生徒への省エネ教育プログラムを行った神奈川県秦野市では、同年8月24日に省エネ教育プログラム指導者養成講座を実施。同市内の小学校と中学校合わせて21校から24名の教員が参加し、各ステップの進め方の講習を受け、体験授業となるステップ4は実際に児童生徒が行う省エネ実験を教員自ら体験した。

秦野市立東中学校で行われた指導者養成講座の様子

社会提案性が評価されキッズデザイン協議会会長賞を受賞

 キッズデザイン賞は、子どもや子育てに関わる社会課題解決に取り組むすべての製品・サービス・空間・活動・研究を対象とする顕彰制度。本プログラムは、子どもたちに具体的な行動変容を促し、結果として各家庭のCO2の排出量が減ることが定量的なデータで明らかになった点で社会提案性が高いとして、第17回キッズデザイン賞において「奨励賞 キッズデザイン協議会会長賞」を受賞している。

 【問い合わせ】
 東京ガス株式会社 都市生活研究所
 「省エネ教育プログラム」事務局
 (ロケーションリサーチ内) 
 窓口担当 粟井(あわい)

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