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一刀両断 実践者の視点から【第395回】

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論説・コラム

希望の職に就けぬ現実に目を

 《子どもたちが工事現場で建設技術を体験 群馬・渋川市》(群馬テレビ)という見出しの記事には目が止まった。現在のキャリア教育の在り方に危険を感じていたからである。
 将来やりたい仕事に就くために筋道をつけていく学びにあっては、皆がやりたい仕事に就けるようにする為にどんな準備が必要かを説明する。
 しかし、それが望んでも叶わない環境や能力や身体などの条件で諦めなければならない方が大半ではないだろうか。嫌な仕事でも家業だからやらねば生活できないとか、家族を養うためにはきつい仕事をしなければならない方が周りには多く存在する。
 キャリア教育の講師を探すのにかなり苦慮した事があった。大学教員に、この分野の話は難しい。勝ち組の感覚では説得力に欠けて上から目線になるからである。能力はあってもそれを認められなければ力は出せない。
 今、こうしたキャリア教育を進めれば益々第一次産業を目指すものはなくなり、日本の根幹が成り立たなくなってしまう。
 房総を襲った台風で屋根瓦が損害を受けたが、数年経ってもブルーシートで屋根が覆われている。屋根瓦職人がいないのである。
 外国人も危険な仕事はしたくはない。
 こうした結果を今のキャリア教育が生み出しているのではないだろうか。その意味で、こうした工事現場でのキャリア教育を全国で奨励して欲しい。文科はその指針をはっきり示すべきではないのか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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