日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

災害時に重要となる避難所でのトイレ確保 貯留型マンホールトイレの整備を進める愛媛県新居浜市

13面記事

施設特集

マンホールトイレ完成後のお披露目式の様子

市内の指定避難所となる小学校に整備

 避難所となる学校施設の水洗トイレは、地震などで給排水・電気設備が被害を受けると使用できなくなる恐れがある。そこで、こうした事態に備え、全国の指定避難場所に設置が進められているのが、下水道管路にあるマンホールの上に簡易な便座やテントを設けてトイレ機能を確保する、災害用マンホールトイレだ。
 新居浜市では、2019年度に防災拠点となる市役所に1箇所、翌年度から指定避難所となる市内の小学校に整備を始め、2022年度までに6校で整備を完了。今年度も2校で整備を進めており、2027年度までに公共下水道に接続可能な小学校15校に整備を実施する計画となっている。上下水道局の玉井和彦次長は「マンホールトイレは1箇所あたり5基を設置され、主にプール水を引き込んで使用することを想定しています」と語る。
 そもそもマンホールトイレの整備に着手した経緯は、2014年度に策定した「新居浜市下水道総合地震対策」において、下水処理場や管路施設の耐震化とあわせて整備を位置付けたことからはじまった。だが、「その時点では具体的な計画までは検討していませんでした」と振り返る。
 その後、同計画を進めていく中で各施設の耐震化には莫大な費用と期間を要することが分かり、近い将来に予想される大地震に備えるためには、ソフト対策と避難所でのトイレ確保を優先的に進める必要があると判断。しかも、熊本地震が発生し、その問題がクローズアップしたこともあり、マンホールトイレの導入を決定したという。

衛生的で臭気も軽減される貯留型を採用

 導入にあたっては、市の下水道管が地震発生直後は使用できなくなる可能性が高いことから、仕切弁によって排泄物を一定期間貯めておくことができる、積水化学工業(株)の「防災貯留型トイレシステム」を選定した。「便槽の中に水を張っておけるため、匂いの発生も少なく衛生的に使えるのが特徴。仮設トイレと違って洋式のため高齢者や子どもでも使いやすく、1基はバリアフリータイプとなっており、車椅子利用にも対応しています」と利点を示す。
 また、市では耐震化が図られた共同処理施設の運用を昨年4月から開始しており、地震発生直後も、このマンホールトイレで貯留したし尿を汲み取りして処理を続けていくことが可能となっている。
 マンホールトイレの整備後には、学校・自治会関係者、児童らに設置の仕方や使用方法などを紹介するお披露目式を実施。「マンホールトイレがどういうものかを知ってもらうとともに、災害に対する意識を高める機会になれば」と期待するが、実際に防災教育の授業として取り入れる学校もあるとのこと。
 ただし、マンホールトイレの整備だけで、災害時のトイレ確保が十分に賄えるわけではないのも現実だ。したがって、「避難所運営においては仮設トイレや簡易トイレなどさまざまなタイプのトイレを段階的かつ効率的に提供できるよう、個人での備えも含め備蓄や調達の準備をしておく必要があります。その上で、今後マンホールトイレの整備を広げていくかどうかも検討するべきと考えています」と語った。

施設特集

連載