文科省 令和6年度概算要求を発表
11面記事文科省は8月末、令和6年度(2024年度)の概算要求を発表した。ここでは、新しい時代の学びに対応し、安全・安心な教育環境を実現する学校施設整備関連の予算に的を絞って紹介する。
公立学校施設整備に2097億円
今回の概算要求では、新時代の学びに対応した教育環境向上と⽼朽化対策の⼀体的整備の推進を図るため、公立学校施設整備に2097億円、国⽴⼤学・⾼専等施設整備に950億円、高等専門学校の高度化・国際化に729億円、私⽴学校施設等整備に362億円を計上した。
公立学校施設整備では、学校施設の⻑寿命化を前提とした⽼朽化対策を筆頭に、誰もが快適に過ごせる教育環境を目指したバリアフリー化、ここ20年間で在籍者が倍増している特別⽀援学校の整備、少子化や義務教育連携に伴う統廃合に対応した他施設との複合化等を進めていく。そこでは中⻑期的な将来推計を踏まえ、⾸⻑部局との横断的な協働を図りながら、トータルコストの縮減に向けて計画的・効率的な施設整備を推進することがポイントになる。
もう1つは、学校施設自体が消費するエネルギーの効率を上げることだ。そのため、建物の高断熱化やLED照明、高効率空調等の整備とあわせて、太陽光発電など自然エネルギーを活用した施設の整備を進め、エネルギー収支ゼロの建築物を目指す。また、人にとって温かみがあり、環境にやさしい木材利用も促進し、持続可能な教育環境の整備を図っていく意向だ。
国立大学や高専の高度化を促進
私⽴学校の施設・設備整備では、公立校よりも対策実施率が遅れている校舎等の耐震改築・補強事業や⾮構造部材の落下防⽌対策等の防災機能強化を重点的に進めるほか、熱中症対策として教室や体育館へのエアコン設置やバリアフリー対策など、安全・安⼼な⽣活空間の確保に必要な基盤的施設の整備を加速化させる。
施設設備の老朽化が著しい国立大学や高専には、イノベーション拠点となる施設の整備や、金属3Dプリンター、精密旋盤等の先端設備に更新する。また、すでに小中高等学校全体で30万人を超え、9年連続で増加している不登校問題に対応するため、不登校特例校や夜間中学として⼩中学校等の設置も進める。不登校特例校の設置促進として3億円、校内教育⽀援センターの設置促進に5億円など、全国的な設置促進・機能強化に向けて総額115億円を要求した。
このような学校施設の整備を行うための具体的な支援策としては、建築費用の補助率の引き上げや単価改定も実施する。例えば、⾃治体に対する施設整備に係る⽀援の拡充では、廃校や余裕教室等の既存施設を改修して活⽤する場合は補助率を2分の1に引き上げる。また、物価変動の反映や標準仕様の⾒直し等に伴う建築費の高騰については、対前年度比プラス19・4%の単価改定を実施する。これにより、小中学校校舎を建築する場合、平米あたりの単価は前年度に引き続いて5万円ほどアップすることになる。
体育館等の防災機能の強化は「事項要求」で
一方、気候変動によって激甚化・頻発化する災害への対応に向けた防災機能の強化については、例年通り、必要額を示さない予算要望となる「事項要求」扱いになっている。政府の国土強靭化計画では、災害時には地域の避難所としての役割を担う学校施設が国の重要インフラの1つとして指定されており、耐震化や老朽化対策、防災機能の強化などに予算が投じられている。
こうした中で、学校体育館では⾮構造部材を含めた耐震対策や浸水対策がいまだ十分とはいえない状況だ。さらに、避難者が快適に過ごすための冷暖房空調機器や多目的トイレ、マンホールトイレの整備の他、電気・ガスが停止した場合に備えた自家発電機やLPガスの備蓄などを早急に進めていく必要があり、さらなる予算の拡充が求められている。