食の自己管理能力を身に付けた子どもの育成を
14面記事山上 望 文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課 食育調査官インタビュー
近年、子どもの偏った栄養摂取、朝食欠食などによる食習慣の乱れが、小児期における肥満や思春期の過剰なダイエットなどを増加させており、生涯にわたる健康への影響が懸念されている。これらの問題を解決する重要な役割を果たす、学校での「食育」のあり方について、文部科学省の山上望食育調査官に話を聞いた。
学校全体で「食育」への理解を促す必要性
正しい食習慣の定着に欠かせない家庭・地域との連携
近年の社会環境の変化に伴い、日本人の食生活の在り様にも大きな変化が現れてきています。このような状況の中、子どもたちが望ましい食習慣を身に付け、生涯にわたって心身ともに健やかに生きていくためには、学校において「食育」を推進していくことは何より大切なことです。
もちろん食育は、家庭を中心として行なっていくものですが、学校においても、子どもたちに「食の楽しさ」や「食の大切さ」を理解させるように学校教育活動全体を通じて積極的に取り組んでいくことが必要です。さらには、そこで学び得た基礎知識に基づいて、子どもたち自身が判断し、食生活をコントロールできるように「食の自己管理能力」の育成に向けて、働きかけていかなければなりません。
また、学校における食育をより豊かなものとするためには、体験活動を踏まえた生産者らとの地域交流等をはじめ、授業参観や給食試食会などの家庭と連携・協働した取り組みも必要です。そのほかにも、お便りや通信、学校のホームページ等を活用した食に関わる情報発信などの普及・啓発に関わる取り組みも必要となります。その際、学校と家庭が相互に情報の共有を図ることができる体制が整備されていれば、さらに充実した取り組みへとつながっていくと思います。
栄養教諭の専門性をより発揮できる環境づくりが重要
学校における「食育」を中心となって担うのは栄養教諭であり、食に関する指導の充実のために努めていく教職員です。
具体的には、栄養素に関する知識をはじめとした専門性を活かして、給食の時間や各教科、個別的な相談指導の場面において、学級担任等と一緒に食に関わる指導を行います。このことについては当然ですが、栄養教諭の職務の一つとして求められているものです。
また一方で、組織として食育に取り組むためには、学校の教職員が食育の重要性や栄養教諭の職務などに対して共通の認識を持ち、その上で指導の実践を行っていかなければなりません。このことについては、学校のみならず、教育委員会をはじめとした行政機関も含めて認識を高め、栄養教諭の配置状況等も踏まえて、今後は対応を検討していく必要があると考えています。
私自身も健康への課題のある子どもが増えてきている状況等を踏まえ、栄養教諭が専門性を十分に発揮し、学校で食育が充実できる環境が整うよう微力ながら尽力して参りたいと思っています。
最後に、食育は成果の見えにくい取り組みですが、「子どもたちが生涯にわたって心身ともに健やかに生きるために、教職員として『情熱』をもって関わり、教育者として『正しい信念』を持って、あきらめずに『やり抜いて』いただきたい」と切に願っています。