日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

「すべての」児童・生徒の一生の思い出を!!松山ユニバーサル・ツーリズム修学旅行をしてみんけん

11面記事

企画特集

城を触れて学ぶツアー

学習資源の宝庫「松山」

 平和学習や世界遺産学習の地である広島と愛媛松山を結ぶエリアは、島々が織りなす風光明媚な景色と、そこで育まれた歴史・文化・産業など多様な資源の宝庫だ。こうした瀬戸内海の魅力を最大限に楽しむことができる松山・道後やしまなみ海道などを組み合わせた教育旅行が定番となって久しい。
 同市が提供するメニューは、他地域との差別化を図り、教育的観点から地域の資源を磨き上げたもので、多様なメニューをアレンジしながら学校の希望に沿うコースを提案している。
 メニューも多種多様であり、瀬戸内海に浮かぶ中島でのみかん収穫体験やナショナルサイクルルートの一つであるしまなみ海道での橋上サイクリング体験、世界の持続可能な観光地で世界1位となった大洲でのカヌー体験などが修学旅行での人気コースとなっている。
 本コースは、コロナ禍であっても変わることはなく、豊富なメニューに加えて、コロナ禍だからこそできるさまざまな取り組みを行ったことや今まで修学旅行の受入のために行ってきた活動などが評価され、同市の受入校数は3年連続で前年を上回り、昨年度も史上最多を更新した。

ユニバーサル・ツーリズムの推進
 そのような状況の中で、同市は、令和5年度から新たに、特別支援学校などに通う、障がいがある児童・生徒に「松山市で充実した修学旅行を行ってほしい」という願いから、サポート内容を充実することで、「すべての」修学旅行生が安心して楽しめる旅行先にする「松山ユニバーサル・ツーリズム」と名付けた三つの事業を進めている。

受け入れ環境の整備
 まず一つ目が、受け入れ環境の整備だ。すでに製作済みの点字・拡大文字教材のブラッシュアップや、手話通訳付き事前学習動画のリニューアル版の制作に取り組んでいる。
 そのほか、目の不自由な児童・生徒が実際に手で触れて学べる松山城や道後温泉本館などのジオラマの製作、民間事業者やNPO法人などと連携した体験メニューの充実にも力を入れている。

助成金制度の充実
 二つ目は、負担軽減のための助成金制度だ。同市では、ユニバーサル・ツーリズム専用の助成金制度を新たに創設している。
 条件は松山市に宿泊することのみであり、基本額のほか体験プログラム実施に対する加算や荷物運搬の費用負担を軽減するための補助などを設けており、申請方法など詳細な情報については、松山市の修学旅行専用ホームページ「おいでんか四国松山」に記載されている。

心のバリアフリー
 三つ目は、受け入れ側の意識醸成だ。特別支援学校や旅行会社への聞き取りでは、修学旅行出発までの準備で一番苦労しているのが、訪問施設でのトイレの場所や休憩スペースの確保など出発までの多岐にわたる事前準備とのこと。
 同市では受入施設関係者が事前でのおもてなしを充実させ、共生社会実現のため、障がい者当事者や関係者から直接、話を聞いて学べるセミナーを開催するなど、心のバリアフリー化を目指していく。

松山市で観幸を
 同市では、前述の三つ以外にも、特別支援学校向けに特化した修学旅行パンフレットを作成したり、どこでも車いすがレンタルできるサービスを取り入れたりするなど、より多くの児童・生徒に修学旅行を楽しんでもらうための準備を進めている。
 いで湯と城と文学のまち松山で修学旅行を受け入れるすべての関係者が力を合わせて、修学旅行生をおもてなししたいと考えている。
 同市での「観光」を通して「感幸」していただければ、文字通り幸いだ。


手話通訳付き動画

企画特集

連載