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だれが校則を決めるのか 民主主義と学校

18面記事

書評

内田 良・山本 宏樹 編
多角的視点で在り方を検討

 「服装の乱れは心の乱れ」。かつて学校が荒れた頃、よく聞いた言葉である。本当にそうなのか。ここ数年は校則改革ブームとなっている。30年前にも同様の盛り上がりがあったが、継続的な見直しはされなかった。本書は教育学の複数の領域にまたがってさまざまな視点から、校則ならびにその改革の取り組みを実践的、学術的に検討することを狙いとしている。
 第1章では「校則緩和で風紀は乱れるのか」、第2章では全生研の集団づくり構想を扱っている。第3章では校則を決定・運用する学校現場の実態を、第4章ではある学校でのルールメイキングの実践例を分析している。さらに第5章では経済的負担という視点から、制服・指定品類の問題を検討し、第6章では外見校則、とりわけ「ルッキズム」という観点を中心に分析している。第7章では校則の国際比較を行い、第8章では校則問題の現状と今後について述べている。
 文科省は令和3年に見直しを求める通知を出し、生徒指導提要でも触れている。現在、各地で校則見直しの取り組みが進んでいる。各校の校則をホームページで公開したり、見直しの指針を出した自治体もある。
 今回の見直し機運の背景には「子どもの権利」がある。一方で壁となるのが、生徒のSES(社会経済的背景)であろう。校則改定にも格差問題は潜んでいるようだ。一時のブームで終わるのか、正念場を迎えている。
(2530円 岩波書店)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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