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教育現場におけるSNSのマナーとリスクマネジメント【第10回】

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論説・コラム

子どもたちを特殊詐欺の「加害者」にしないために

 「特殊詐欺」の増加が止まりませんが、バイト感覚で加害者となり検挙される少年も増えています。子どもたちを「闇バイト(=犯罪)」から守るために押さえておきたい最新情報を解説します。

「特殊詐欺」に加担して検挙される少年が増加中

 オレオレ詐欺、預貯金詐欺、キャッシュカード詐欺盗など、巧妙な手口で不特定多数の者から現金等をだまし取る「特殊詐欺」。令和4年の被害件数は17,520件(+3,022件、+20.8%)、被害額は361.4億円(+79.4億円、+28.2%)と、前年に比べていずれも増加しています。
 その被害の大きさもさることながら、この「特殊詐欺」に加担して検挙される少年たちも増加しているのは深刻な事態です。令和4年における少年の検挙人員は477人(+44人)で、総検挙人員に占める割合は19.3%。検挙された少年の73.2%が受け子(349人)であり、実に受け子の5人に1人が少年だったそうです。
※参考:警察庁『令和4年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について』https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/tokusyusagi_toukei2022.pdf

 なぜ、ここまで多くの中学生・高校生・専門学校生・大学生らが犯罪に加担してしまうのでしょうか。罪の意識を感じさせにくい「闇バイト」等の名称もひとつの理由でしょう。以下に、犯罪行為につながる可能性の高い「闇バイト」の特徴をいくつか挙げて解説します。

(1)「高額バイト」「闇バイト」「裏バイト」「闇仕事」「裏仕事」「即日即金」などの誘い文句

 「お金がほしい」と思っている子どもたちが、「簡単にできて高収入なバイトがあるよ」「忘れ物を受け取りに行ってほしい」「貴重品を運ぶだけの簡単な仕事です」といった、学校や地域の先輩・知人によるSNS投稿を見て応募するケース、先輩から勧められたり頼まれたりして引き受けるケースなどが多いようです。

→SNSにも実生活にも、犯罪グループのリクルーターが潜んでいます。「世の中にうまい話は存在しない」ことを、改めてお伝えいただければ幸いです。

(2)秘匿性の高いTelegram(テレグラム)でのやり取りを求められる

 バイトに応募した後、LINEやTwitter、InstagramなどのSNSではなく、Telegram(テレグラム)というメッセージングアプリでのやり取りを求められるケースが多いようです。テレグラムは「履歴を残さずやりとりできる」「メッセージを暗号化できる」等の特徴に加えてスクリーンショットにも制限がかかります(Android:スクリーンショット不可・iOS:スクリーンショットをとると相手に通知される)。

→テレグラムは、「絶対に証拠を残したくない」場合に利用されるアプリです。それが何を意味するのか、子どもたちも気づけるようご指導いただければ幸いです。

(3)身分証や個人情報の提出を求められる

 「アルバイトの登録に必要だから」等と理由を挙げて、身分証(学生証/免許証)の写真を送るよう求められたり、自宅の住所や家族に関する情報の提供を求められたりすることもあるようです。うっかり送ってしまうと、後々闇バイト(犯罪行為)を断ろうとした際の脅しに使われるケースも多く、注意が必要です。「自宅に押し掛けるぞ」「家族がどうなってもいいのか」等と凄まれ、泣く泣く犯罪に加担した挙句、逮捕されてしまった子どもたちも多いのです。

→上述の(1)(2)に該当する場合は絶対に身分証や個人情報を相手に渡さないように。そして、相手から脅された場合には信頼できる大人にすぐに相談するよう、ご指導をお願いします。

 「ちょっとしたお小遣いがほしい」「遊ぶ金がほしい」子どもたちが、気軽な「バイト感覚で」足を踏み入れてしまうと、やめたいと思っても脅されたり金品を奪われたりして、なかなか抜け出せなくなるのが裏社会の恐ろしいところです。また、特殊詐欺の犯行グループから見れば、「受け子」「出し子」などをやらせる子どもたちは「使い捨てできる“駒”」「トカゲのしっぽ」程度にしか考えていません。結果的に検挙されるのは「末端」の子どもたちばかりで、「上位」と呼ばれる主犯や指示役は相対的に摘発すらされにくいのが現状です。

 お金目的でも好奇心からでも、犯罪には絶対にかかわるべきではありません。学校や地域の先輩から無理やり犯罪に引き込まれそうで断りにくい場合には、信頼できる大人や警察に相談させることが大切です。
※参考:都道府県警察の少年相談窓口:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/syonen/soudan.html

 子どもたちが特殊詐欺の片棒を担がされて「加害者」となり、検挙・逮捕されて一生を台無しにしてしまうことがないよう、ゴールデンウィークや夏休み前にもぜひご指導をお願いします。

教育現場におけるSNSのマナーとリスクマネジメント