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ウェルビーイングな学校をつくる 子どもが毎日行きたい、先生が働きたいと思える学校へ

12面記事

書評

中島 晴美 著
学術的知見踏まえた実践の記録

 人のあらゆる営みは幸せにつながっている。学校の最上位の目標も「子ども・教職員のウェルビーイング」。よりよく生きるためにこそ教育を充実させるべきと考える。
 本書は教職員に「幸せに働いてほしい」、子どもたちに「幸せに生きる力を身につけてほしい」、保護者・地域へ「ウェルビーイングの考えが広がってほしい」という思いから、ウェルビーイングに関する学術的な知見(SPIRE理論・幸福4因子モデル・心理的安全性)を学校現場で共有し、実践したことをまとめた一冊である。
 まずは、ウェルビーイングの共通理解を図るために「学校だより」や学校運営協議会、Facebookなどを活用し、「知ってもらう段階」を創出。次に「理解してもらう段階」、そして「考えを実践する段階」と引き上げる。本書でとりわけ共感できるのは「たとえウェルビーイングのすばらしい考え方であっても、上司からの指示命令だけでやりなさいと言われ、心がそこになければ全く意味のないもの」と肝に銘じ、丁寧に伝え体現していくところ。終章では、著者の勤務校のウェルビーイングに関する学校評価が掲載され、ウェルビーイング・カリキュラムや学校評価の質問項目として参考になる。
 もともと教師は大変真面目で、「子どものために」を信条として、自分の犠牲の上で成立することをよしとする傾向がある。しかし、幸せは伝播する。教師自ら幸せを追求する「幸せの率先垂範」も大事なことである。
(2200円 教育開発研究所)
(青木 一・信州大学大学院特任教授)

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