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防犯カメラの補助率引き上げ 不審者の学校への侵入防止対策を強化

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文科省

中学校の不審者侵入事件を受けて
 3月1日に、埼玉県戸田市の中学校で侵入した高校生に教員が切りつけられた事件を受け、文科省は防犯カメラや校門を施錠するオートロックシステム、警察への非常通報装置などを小中学校等で迅速に整備できるよう、来年度から3年間、補助率を引き上げるなど支援を強化することを決めた。
 具体的には、補助率を3分の1から2分の1に引き上げるとともに、小規模の整備でも補助を受けられるよう、補助の下限額も現行の400万円から100万円に引き下げ、不審者侵入対策として効果的な防犯カメラなどの導入を進めやすくする。
 また、総務省もこれに合わせ、残る2分の1の自治体負担に関する地財措置を拡充する意向で、松本総務相は記者会見で「児童生徒の安全を守るため、文科省と連携しながら学校における防犯対策の強化を推進する」と述べている。
 文科省は3月17日付で、こうした補助事業の拡充に伴う活用の推進について各教育委員会に通知。併せて、各学校の設置者において危機管理マニュアルの総点検を実施することを求めている。
 その上で、「平時の備えの確認」として、安全教育指導者の養成や、教職員の安全対応能力の向上のための講習会等の実施、警察直通の非常通報装置の効果的な活用を検討することや、「見守りの強化」として、スクールガード・リーダーの養成を含む地域ぐるみでの学校防犯活動の強化、警察署等に配置されるスクールサポーターとの連携、学校・警察間の日常的な情報共有・相談体制を構築することなどの重要性を挙げている。

危機管理としての実効性を高めていく
 学校への不審者侵入や登下校中の犯罪・事故から子どもを守るために、防犯カメラなどの安全対策を強化していくことは歓迎したい。ただし、事件が起きた戸田市では、2021年度時点で全小学校区の通学路を中心に「見守り防犯カメラ」を300台設置し、子どもの位置情報を家族や保護者に通知する見守りサービスを開始していた。にもかかわらず、今回の事件を未然に防ぐことはできなかった。
したがって、誰もが予測が困難な突発性の高い犯罪・事故に対しては機械に頼るだけでなく、教職員一人一人が日頃からこうした事態が起こることを想定し、どのように対処するべきかを具体的なアクションとして備えておく必要がある。それは、地域の安全を見守る体制についても同様のことがいえる。防犯カメラなどの安全対策はあくまでも犯罪・事故を抑制する装置としての導入であり、そこには人の手が介在しなければ、いざというときに安全までを担保することはできないことを肝に、リアルに起こり得る意識付けのもと、危機管理としての実効性を高めていく必要がある。

ランニングコストも視野に入れた導入を
 なお、防犯カメラ等を補助金によって導入するのはいいが、維持管理に対しての補助はないことにも注意しておきたい。いったん導入すれば、電気代や保守点検代、故障したときの修理代などメンテナンスにも費用がかかるからだ。
 地域の防犯力が高まったと思っていたら、数年後には使われなくなった、故障して動いていないということにならないためにも、導入時にはランニングコストも視野に入れて検討することが大切だ。

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