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夢をみつけ、未来を考えるきっかけに 第16回「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」

7面記事

企画特集

主催=特定非営利活動法人=NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
共催=日本教育新聞社
後援=文部科学省、金融庁、金融広報中央委員会、全国都道府県教育委員会連合会、日本PTA全国協議会、全国地方新聞社連合会、学研プラス、日本FP学会主催

 特定非営利活動法人=NPO法人 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(略称=日本FP協会)が主催する、第16回「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」(共催=日本教育新聞社、後援=文部科学省、金融庁、全国都道府県教育委員会連合会ほか)の入賞作品が最終審査会を経てこのほど決まった。
 全国から寄せられた作品総数は2329作品(学校応募74校、中・低学年431作品、高学年1898作品)で、厳正な第1次選考(237作品が通過)、第2次選考(各部門23作品が通過)を経て、個人賞として中・低学年部門と高学年部門にそれぞれ最優秀賞1名、優秀賞と奨励賞各10名、学校賞として最優秀学校賞1校と優秀学校賞10校が選ばれた。また、今回より両部門の個人賞に特別賞1名、学校賞に特別学校賞1校が新設された。最優秀賞の受賞者と審査員長・北俊夫氏(総合初等教育研究所参与)のコメントのほかに作品の全文とその「ライフプランシート」を掲載する。

意義あるキャリア教育の一環として

 「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」は、日本FP協会がキャリア教育の充実を願い、全国の小学生を対象に開催している。同コンクールは、課題図書『夢をかなえる―FPはライフプランのサポーター―』を読み、ライフプランニングの重要性や大切さを学び、具体的な将来の夢を描いてもらうことを目的としたものだ。
 今回「中・低学年の部」で最優秀賞に輝いたのは、徳島文理小学校4年・鳥羽乃生さんの「自分を信じ、日々成長したい」。夢は高校の古典の先生。作品は「阿波かるたをきっかけに古典に興味を持ち、高校の教員まで夢を広げているところが素晴らしい」「日本文化の大切さや伝承に思いをはせている」と評価された。
 鳥羽乃生さんは、工夫した点について「自分がやりたいことと将来なりたい職業の両方をかなえられるように、いつ何をするのか具体的に考えました。わからないことは、お父さんやお母さんと一緒にインターネットや職業図鑑で調べました」と話した。
 指導を担当した笹田みすえ教諭は、国語の「ドリームツリーを作ろう」の授業を活用し、コンクールに挑んだ。授業で夢をかなえるための設計図としてドリームツリーを作成。グループで感想やアドバイスを出し合い意見交換をさせた。そして、夢をかなえる作文に取り組んだ。「内容を整理したり、さらに詳しく調べたりする時間が必要だったので、夏休みの課題として保護者の協力を得ることにしました。参考として、本校で過去に優秀賞を受賞した児童のライフプランシートと作文を印刷し、配布しました」と振り返る。


「中・低学年の部」最優秀賞 左から笹田みすえ教諭と鳥羽乃生さん

 「高学年の部」で最優秀賞に輝いたのは、相模女子大学小学部6年・小松桃寧さんの「みんなの笑顔を守りたい」。夢は総合内科医だ。作品は「医師である父から学んだことや自分の考えが筋道を立てて述べられており、説得力がある」「医師を志す動機や医師になるための道のりが明確ですばらしい」と評価された。
 小松桃寧さんは、同コンクールの参加を通して、医師になるために具体的にどのようなことをすればよいか考えるきっかけになったという。これからがんばりたいことについては「遠回りしても、いろいろな人と出会って、視野を広げてから医師になりたいと思います。ライフプランシート通りにならないことも出てくると思いますが、その都度軌道修正し、努力を決して欠かさず、辛くなったときには、この作文で考えた理想の未来を思い出し、全力で頑張ろうと思います」と意気込みを語った。
 担当の天野悟司教諭は「本校では、6年生が作文コンクールに毎年応募します。3月に小学校の卒業を控えたこの時期に、将来やりたいことを思い描くというのは、多くの子どもたちにとって、期待に胸が膨らむとても楽しい活動です。しかし、中には夢が見つからない、夢はあるが不安でなかなか言い出せないという児童もいます。そのため、まずは、児童のどんな夢でも応援する、実現させるためにどうすればいいか一緒になって調べ、真剣に相談に乗る、というようなことを意識して指導しました」と話した。


「高学年の部」最優秀賞 左から小松桃寧さんと天野悟司教諭

ICTの活用でより主体的に

 GIGAスクール構想により、1人1台端末が整備されたことで、調べ学習における情報収集の仕方の変化や一人一人の「主体的・対話的で深い学び」への活用が期待されている。
 審査委員長の北俊夫氏は「学校でのICT活用により、多種多様な職業を目指す児童が増え、夢が広がったように思います」とコンクールを総括した。

個人賞
中・低学年の部 最優秀賞
自分を信じ、日々成長したい
徳島県 徳島文理小学校 4年 鳥羽 乃生

 私の将来の夢は、高校教師になる事です。その中でも、古典を教えたいと思っています。きっかけは、百人一首を使った競技かるたです。私は、小学三年生から、競技かるたを始めました。はじめは、札を暗記し素早く札を取る事が楽しかったのですが、続けていくうちに、和歌の意味や歌人達、その時代背景について知りたくなりました。そこで、百人一首をはじめ色々な古典の本を読み、古典の面白さに夢中になりました。飛鳥時代から鎌倉初期まで、ほぼ年代順に並んだ百人一首。現代から千年以上も前のものが歌いつがれている事を知り感動しました。今まで残ってきたこの文化を、この先もずっと残していきたい。そのために、もっと古典について学び、教師となり、その面白さを次世代の子ども達に伝えていけたらいいなと思います。
 そこで、私は高校教師の仕事について調べてみました。すると、高校教師はその教料の本当の面白さを伝える「学問のプロ」としても工夫が求められると書いてありました。私は、まだ小学生ですが、先生が教科書にのっていない事も教えてくれた時、その科目にどんどんきょう味がわき、好きになった経験があります。そして、高校教師になるには、自分自身がその分野について深く理解する必要がある事が分かりました。また、学校行事や部活動の指導も重要です。学校の色々な行事にも、今まで以上に一生けん命取り組もうと思いました。学生時代は、競技かるた部での活動を仲間といっしょにがんばり、その経験を伝えたいです。
 夢を叶えるために私が今出来る事は、目の前の勉強をしっかりやる事、古典や歴史の本をたくさん読み知識を増やす事だと気付きました。夢を夢で終わらせないために、自分の可能性をあきらめず、自分を信じて、日々成長していきたいです。

個人賞
高学年の部 最優秀賞
みんなの笑顔を守りたい
神奈川県 相模女子大学小学部 6年 小松 桃寧

 「具合の悪い患者さんが、笑顔で診察室を出ていくんだよ」。
 父の話を聞いたとき、私もそんな医師になりたいと強く心に決めた。この決心は、どんなに丈夫な石よりも堅い。父は総合診療医だ。総合診療医は、他の専門家と異なり、臓器を限定せずに人を診る。そう語る父に憧れた。
 私の幼い頃、父は夜も休日も家にいなかった。幼い私が自宅を「お母さんの家」と呼んだほど、父は不在だった。また、幼稚園の行事に、みんなは両親が来ている中、私の父はいつもいなかった。私はずっと寂しかった。
 けれどそんなとき、父はいつも生死をさまよう患者の集中治療をしていたと後から聞いた。父は東日本大震災のときも、日本に初めて新型コロナウイルスが入ってきたときも、最前線で働いていた。また、野外音楽フェスティバルに行ったときには、ある観客が倒れてしまい、父はすぐに走って助けに行った。その姿を私は実際に見た。みんなが大変なとき、楽しいとき、父は変わらずに医師だった。そして、探究のために父の仕事を見学したとき、患者の笑顔を見て、父は患者の笑顔を守っているのだと初めて気がついた。そのとき私は、自分も医師になりたいと改めて思った。
 では、医師にとって必要なことは何か。一つ目は、常に学び続けることだ。医師になるには、大学の医学部に入り、六年間学ばねばならない。知識だけでなく、実習も必要だ。私は医学部のある大学附属の中学校を目指している。自宅から一番近い学校を選び、空いた時間を有効に使っていきたい。その次に国家試験を受ける。さらに研修医として働きながら学び続ける。そして、医師になってからも、新しい疾患や新しい治療は次々に生まれてくる。だからこそ、患者から学び続けねばならない。学び続けるためのお金を負担してくれる両親に、感謝の気持ちでいっぱいだ。
 二つ目は、多角的な視点と人の話を聴く力だ。可能性を狭めないことが大事であろう。例えば、息苦しさの原因は肺かもしれないし、心臓かもしれない。データをもとに考えるだけでなく、患者の話を聴き、その中からヒントを見つけることもあるだろう。
 三つ目は他人を思う心。これは一番大事なことだと思う。今のうちから他人と上手に接する練習をしておく必要がある。学校は社会を学び、失敗をして次に活かす場所だと思う。友人や先生から人としての関わりを学び、人を心から大切にしていこうと思う。
 医師になるため、前を向いてしっかりとステップを重ねていく。大きくて高い壁にも負けずに立ち向かって、飛び越える。父は人々の健康を守りながら笑顔を守ってきた。私も医学だけでなく、人として相手を大切にする力も合わせて、誰かの笑顔を守れる総合診療医になりたい。私は、誰かの笑顔を見ることが何よりも幸せだから。

第16回 「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」受賞者・受賞校一覧

【個人賞】―中・低学年の部―(50音順・敬称略)

・最優秀賞(1点)
 鳥羽 乃生(徳島県・徳島文理小学校4年)

・優秀賞(10点)
 秋山 ラン (東京都・筑波大学附属小学校3年)
 宇都宮 沙希 (東京都・筑波大学附属小学校1年)
 奥田 煌樹 (千葉県・船橋市立八栄小学校2年)
 木村 涼花 (東京都・東京学芸大学附属世田谷小学校3年)
 鈴木 大華 (東京都・筑波大学附属小学校3年)
 竹田 名月子 (東京都・練馬区立南が丘小学校1年)
 並木 暦 (東京都・筑波大学附属小学校3年)
 春木 絵莉香 (東京都・筑波大学附属小学校3年)
 禮田 桜妃 (東京都・筑波大学附属小学校4年)
 脇坂 真陽 (東京都・筑波大学附属小学校1年)

・特別賞(1点)
 椎野 百合子 (徳島県・徳島文理小学校4年)

・奨励賞(10点)
 出雲 愛惟 (群馬県・フェリーチェ玉村国際小学校4年)
 伊藤 鈴藍 (東京都・筑波大学附属小学校1年)
 ウィゲン 祥史 (オタワ補習校3年)※カナダ
 植木 悠晴 (東京都・筑波大学附属小学校4年)
 大田黒 文花 (東京都・筑波大学附属小学校1年)
 小延 陽与莉 (徳島県・徳島文理小学校4年)
 塩崎 賢 (東京都・筑波大学附属小学校4年)
 田中 宗知 (東京都・筑波大学附属小学校4年)
 藤木 結子 (埼玉県・さいたま市立三橋小学校4年)
 昌山 琴子 (東京都・筑波大学附属小学校4年)

【個人賞】―高学年の部―(50音順・敬称略)

・最優秀賞(1点)
 小松 桃寧(神奈川県・相模女子大学小学部6年)

・優秀賞(10点)
 大久保 知花 (神奈川県・相模女子大学小学部6年)
 北上 莉子 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
 木村 颯汰 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
 重永 樹里 (鹿児島県・薩摩川内市立平佐西小学校6年)
 田中 香帆 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
 中野 咲子 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
 中村 桃子 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
 萩原 茉春 (鹿児島県・鹿児島大学教育学部附属小学校6年)
 星簇 有紀 (鹿児島県・鹿児島大学教育学部附属小学校6年)
 米谷 祐穂 (秋田県・秋田大学教育文化学部附属小学校6年)

・特別賞(1点)
 廣重 佳 (佐賀県・佐賀市立勧興小学校6年)

・奨励賞(10点)
 秋場 夢斗 (埼玉県・春日部市立備後小学校6年)
 河井 穂佳 (東京都・国本小学校6年)
 黒川 紗菜 (埼玉県・春日部市立備後小学校6年)
 小間 史敦 (東京都・玉川学園小学部5年)
 冨田 麻悠子 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
 豊田 彩夏 (埼玉県・春日部市立備後小学校6年)
 中垣 慶音 (愛知県・名古屋市立北一社小学校6年)
 花川 峻誓 (京都府・京都教育大学附属京都小中学校6年)
 三宅 瑞希 (愛知県・名古屋市立北一社小学校6年)
 山本 凜 (東京都・筑波大学附属小学校5年)

【学校賞】 ※都道府県別

・最優秀学校賞(1校)
 東京都・筑波大学附属小学校

・優秀学校賞(10校)
 群馬県・フェリーチェ玉村国際小学校
 埼玉県・春日部市立備後小学校
 東京都・国本小学校
 東京都・玉川学園小学部
 神奈川県・相模女子大学小学部

・特別学校賞(1校)
 茨城県・土浦市立右籾小学校
 愛知県・名古屋市立北一社小学校
 京都府・京都教育大学附属京都小中学校
 大阪府・大阪市立長吉出戸小学校
 徳島県・徳島文理小学校
 鹿児島県・鹿児島大学教育学部附属小学校

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