新型コロナウイルスだけではない これからの季節に注意が必要な感染症
9面記事子どもに多い呼吸器系の感染症
新型コロナウイルスの出現は、皮肉にも一人一人の感染予防の意識を高め、インフルエンザを始めとするさまざまな感染症の流行を抑制することにつながった。しかし、そのぶん感染者数が減り、免疫を持つ人が少なくなったことで、再流行した場合には感染者が従来よりも大幅に増えてしまう恐れも出てきている。その一つが、一昨年に続いて昨年も大きく感染者を伸ばしたRSウイルス感染症だ。
RSウイルスは、2歳までにほとんどの子どもが一度は罹る呼吸器の疾患だが、近年では小学生以上でも罹ることが多くなっており、心臓や呼吸器の持病があるなど抵抗力の低い子どもは重症化する恐れもある。また、感染時期も従来は9月頃から流行していたものが、5月から夏季にかけて流行する傾向にシフトしており、2021年の定点医療機関当たりの感染者数が、前年の400倍に上った週もあった。非常に感染力が強いため、特に幼稚園・保育園などの施設内感染に注意を払う必要がある。
なお、感染経路は「接触感染」と「飛沫感染」になるため、新型コロナウイルスと同様の対策が重要になる。
夏季になると増えだす感染症とは
夏になると子どもを中心に患者数が増える感染症には、「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」などがある。手足口病は、手足の水疱と口内炎ができる夏風邪の一種。口の中の粘膜や手のひら、足の裏、足の甲などに水疱性の発疹が現れて数日間発熱することがあり、髄膜炎になることもあるため注意が必要だ。
ヘルパンギーナは乳幼児に多く見られる夏風邪の代表的なウイルス性の感染症で、39度以上の熱が数日続くと同時に、のどが赤く腫れて小さな水疱ができる。双方とも口内炎やのどの痛みで食事や飲みものを受けつけなくなることから、「脱水症状」にも気を付けなければならない。
咽頭結膜熱はアデノウイルスが原因で、通常は便や唾液を通じて感染するが、特に夏季においてはプールの水から感染する確率が高いとされているため、プール熱とも呼ばれている。症状としては、のどの痛み、目の充血、39度前後の発熱が数日から1週間続く。タオルの共用や手指を介した「接触感染」によって感染したり、塩素消毒が不十分なプールに入ったりすることでも感染するため、学校のプール使用時における管理が大切になる。
冬季に限らず発生している感染性胃腸炎
近年では感染性胃腸炎も、冬季に限らず1年を通じて発生している。感染性胃腸炎の原因となるノロやロタウイルスは、コロナ禍で定着したアルコール消毒だけではあまり効果がないため、常日頃からのきちんとした手洗いの徹底が求められる。
学校で感染性胃腸炎に罹った子どもが出た場合に注意しなければならないのが、下痢やおう吐によって脱水症を引き起こす可能性が高くなることだ。ただし、水分だけ摂取してしまうとかえって脱水が進行してしまうため、塩分などの電解質と糖とがバランスよく配合されている経口補水液を常備し、いざというときの治療に充てる学校も多くなっている。
もう一つ注意しなければならないのが、二次感染による集団感染を防ぐことだ。とりわけ重要となるのが、子どもがおう吐したときの処理になる。おう吐物の中には大量のウイルスが存在し、乾燥すると空中に漂うことで口に入って感染するため、「汚物処理キット」などを使って迅速かつ安全に処理することが必要になる。加えて、室内の窓を開けて換気するとともに、子どもがよく触れる場所を消毒することも忘れてはならない。
そのほか、教職員に注意してほしいのが、春から夏の期間に多発する傾向がある風疹だ。なぜなら、昭和37年~53年生まれの男性は過去に予防接種を行っていないため、自分が風疹に罹ると周囲の人たちに広げてしまうおそれがあるからだ。症状としては、発疹が胸と顔から広がり、リンパ腺が腫れて発熱を伴うのが特徴になる。
近年では2018~19年にかけて大幅に発生数を伸ばした経緯があり、厚生労働省では、この世代の男性を対象として、風疹の抗体検査と予防接種を原則無料で実施しているため、ぜひ利用してほしい。