日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

教師としてシンプルに生きる

15面記事

書評

若松 俊介・枡野 俊明 編著
悩み抱える教員へのヒントに

 「人に歴史あり」という言葉がある。見た目だけでは分からないが、対話などを通じて明らかになっていくこと。その人が持つ大きな魅力の一つとも言える。今活躍している人でも、苦難を乗り越えてきた経験などがある。それは教員も例外ではない。本書はそのようなことを彷彿させる一冊となっている。
 著者の一人が、今まさに教育現場で活躍している若松俊介・京都教育大学附属桃山小学校教諭。教師になったばかりの駆け出しの時期を振り返り、最初は子どもと「人と人」として向き合えていなかった「弱い教師」であったことを告白している。それから子どもたちに教えてもらったことを中心に、自らの実践や技術を高めるようになった転換期に触れている。その一つが禅との出合い。枡野俊明・曹洞宗徳雄山建功寺住職に話を聞きに行き、教師の悩みや未来における役割を尋ね、対談形式でまとめた章もある。枡野住職はもう一人の著者であり、教育現場の教師に向けたメッセージも収録されている。
 本書は、禅宗の考えを取り入れた教育技術に関わる書籍ではない。枡野住職の力を借り、あくまで若松教諭が自分で考え、子どもとの関わりや研究会で受けた刺激などを整理したものになる。そこで見えてきたのは「シンプルに生きる」ということ。教師の職務内容は多岐にわたる。そのため、悩みを抱えている若手教員には示唆に富むような内容とも言える。
(1760円 東洋館出版社)
(斉)

書評

連載