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リーダーのためのメディアガイド【第85回】

5面記事

企業

「電力バランスゲーム ~町に電気をとどけよう~」経済産業省資源エネルギー庁・2019年
小野 憲史 ゲーム教育ジャーナリスト(東京国際工科専門職大学講師)
日本のエネルギー事情の学習機会に

 「研修ゲーム」というジャンルがある。企業の社員研修などに用いられるもので、1930年代のロシアにまで起源をさかのぼれる。日本には戦後、進駐軍によって伝えられ、1960年代に全国の企業に広まった。アイスブレイクに使うものから企業経営を疑似体験するもの、アナログゲームの形式を取るものからコンピュータ上でプレーするもの―と、さまざまな種類がある。企業・大学・ビジネススクールまで、幅広く活用されている。
 この研修ゲームが近年、自治体による地域住民とのコミュニケーションの手段に活用され始めている。大規模災害時の避難所運営がテーマの「避難所運営ゲーム(HUG)」は好例で、静岡県が南海トラフ地震などに備えて、2007年に開発した。体験会が全国で開催されており、ニュースの俎上に載ることもある。中にはコンピュータ上で楽しめるものもあり、新たな学びのスタイルとして注目されている。
 こうした中、2019年にリリースされたゲームが「電力バランスゲーム~町に電気をとどけよう~」だ。経済産業省資源エネルギー庁が民間企業と連携して開発したもので、ホームページ上で無料で楽しめる。プレーヤーは発電所の職員となり、電力の需給調整を疑似体験しながら、日本のエネルギー事情について学べるというものだ。小・中学生を主な対象としているが、大人でも十分に楽しめる内容になっている。
 ゲームは翌日の天気予報から始まり、その日の電力需要予測が表示される。プレーヤーに求められるのは、その予測に従って太陽光・風力・水力・火力・原子力の各発電所から供給される電力を割り振っていくことだ。ただし、火力発電は供給量の調整が容易だが、地球温暖化の原因になるCO2を排出するなど、それぞれの発電形式にメリット・デメリットがある。ゲームを攻略するには、これらの特性を理解することが重要になる。
 このように本作をはじめとした研修ゲームには、ゲームを通してモチーフとなる対象の構造や、そこでの振る舞い方が学べる点に特徴がある。もっとも、学びを深めるためにはゲーム前後のファシリテーションが不可欠だ。そこで求められるのが教員の役割というわけだ。実際に本作を遊ぶと、原子力発電の重要性と火力発電の便利さがよく分かる。では、誰が何のためにメッセージを発しているのか。そうした議論にまで展開できる教材だと言えそうだ。

 「電力バランスゲーム~町に電気をとどけよう~」は下記で公開。
 https://www.enecho.meti.go.jp/about/kids/game/

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