全国SLA通信 新しい教育を拓く学校図書館【第5回】
4面記事学校図書館を授業で活用
資料や情報の活用で子どもが変わる
「目の前の子どもが変わる」と学校図書館活用授業を実践する司書教諭は言います。学校図書館活用とは、資料や情報を活用する学習・授業です。
例えば、クラス全員で同じ本(資料)を読む場合にも、各人の考えや思いを共有することで、他者と自分の感性や解釈、価値観、立場などの違いに気づき、思考や読みの力が深まるでしょう。
ディベートの時には、資料・情報にあたって多くの論拠を用意しているほど、活発な深い論を展開できます。
ポスターや標語を作る時には、サンプルになる資料があると、想像や表現がしやすくなります。
18歳成人について考える時には、国際的な成人年齢やどのような議論がなされてきたのかなど、社会的・背景的な情報や資料があれば、思考や議論は深まります。
資料や情報の活用は、理解を促し、持っている知識を引き上げ、思考する間とプロセスを生みだします。他者との協働の場面を生みだし、クラス全体の学びを深く豊かなものにします。
また、探究的な学びでは、資料や情報の活用が前提となります。コンピューターやインターネット等の普及により、人間は膨大な情報に対処せざるを得なくなり、情報を使う力(情報リテラシー)を身に付ける必要性に迫られました。
「情報リテラシーのある人とは、情報が必要であるときを認識でき、必要な情報の所在を知る能力をもち、必要とした情報を理解し、効果的に利用できる能力をもった人である。…つまり、情報リテラシーのある人とは、学び方を知っている人である。学び方を知っているというのは、知識を通して学習することができるように、知識がどのように整理されていて、どのように見つけだせばよいか、どのように情報を利用したらよいかを知っていることである」とアメリカ図書館協会では説明しています。
日本では、「情報リテラシー」が「情報活用能力」として紹介されましたが、これは、どのような未知の状況に出会っても、情報を選択・収集してインプットし、思考力・判断力・表現力を駆使してアウトプットするという資質・能力です。そのために、探究プロセスの経験を積み重ねて、自らそのプロセスを作り出せる力を身に付けさせることを目指しています。
学校図書館は、印刷物でも視聴覚でもデジタルでも、多様なメディアの資料・情報の特性を知り、情報の比較・選択の力を養い、どのような資料・情報にも主体的に対応できる力を児童生徒に培います。そうした学習・授業を支援・指導するのが司書教諭と学校司書です。
また、1人1台端末のおかげで、利用できるメディアの選択の幅が広がりました。今まで以上に、発達段階を考慮した資料・情報の活用に留意していかなくてはなりません。
こうした学校図書館の多様なメディアの資料・情報を活用した授業実践が増え、自ら思考する子どもたちが育つことを、心から願っています。
(放送大学客員教授・堀川照代)
第3回情報活用授業コンクール
豊かな授業実践を応募しよう!
学校図書館活用、すなわち印刷やデジタル、インターネットによる多様な資料やITCを活用した、豊かな授業実践を募集します。
主催
(公社)全国学校図書館協議会
協賛
キハラ株式会社
応募資格
国公私立の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、義務教育学校、中等教育学校に勤務する教職員(教員、司書教諭、学校司書等)。
複数名の応募も可。
区分
小学校の部
中学校の部
高等学校の部
特別支援学校の部
対象とする実践
過去3年間以内の単元の授業実践。
教科・領域は、単一・複数・総合的な学習の時間・教科横断的なもの、いずれでも。
1単元につき1件の応募とします。
評価の観点
(1) 学習のねらいと実態に即した資料であったか(資料・情報の選択・収集の工夫、資料・情報の適切性)
(2) 資料・情報をどのように利用させたか(資料・情報の利用方法の工夫、適切性)
(3) 目的に合わせて指導できたか(資料・情報活用の指導の方法の工夫、適切性)
応募期間
2023年2月1日~4月5日(当日消印有効)
表彰
優秀賞、キハラ賞、情報活用推進校
※応募方法等詳細は、全国SLAのサイトをご覧ください。
https://www.j-sla.or.jp/contest/jouhoukatsuyoujugyou3.html
問い合わせ
公益社団法人全国学校図書館協議会
〒112―0003 東京都文京区春日2―2―7
Tel 03―3814―4317
FAX 03―5804―7546
※本稿の記事は月刊「学校図書館」に掲載したものが含まれます。