勉強できる子は○○がすごい
12面記事榎本 博明 著
トレーニング通じ学ぶ力を育む
題名の「○○」に入る言葉は何だろう。計画力? 集中力? 予想しながら読み始めた。予想は外れ。
「勉強できる子」とは、学ぶ力が育っている子を指し、単に成績の優秀さを問題にしていない。成績が学んだ成果の指標とすれば、学ぶ力は潜在的で成果を生み出す元となる力を指す。この「学ぶ力」を育てることが肝要と著者は言う。学ぶ力が育まれていたら、社会に出てどんな仕事に就こうとも必要なことを効果的に学んでいけるという。まさに未来を生きる子どもたちに必要な力だ。
学ぶ力の重要な要素に「メタ認知」がある。そもそも学力が高いから、メタ認知力も高いのではと思いそうだが、心理学博士である著者は、メタ認知力はトレーニングによって高められるという。その方法が数多く紹介されているので興味深い。
立ち止まり、ふと考える。自分はメタ認知できずに残念な姿をさらしていないか。子どもだけではない。本書は大人にとっても有益だ。第5章「能力向上のための心の習慣」で紹介されている「問題を解きながら自問自答する」「著者が何を言いたいのか考えながら読む」ことなど、すぐに始められそう。
一人一人にメタ認知的モニタリングが機能する力を育み学ぶ力を高めるべく、個に応じた支援のヒントが得られる。新書版サイズなので携行しやすい。教育関係者のみならず保護者にもお薦めする。
(990円 発行・日経BP 日本経済新聞出版、発売・日経BPマーケティング)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)