日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

学習指導要領「次期改訂」をどうする 検証 教育課程改革

21面記事

書評

渡辺 敦司 著
課題明示し、現行要領の理解促す

 学習指導要領が始まったばかりの校種もある中で、「次期改訂」を打ち出した本書について、著者自身「無謀」と評するが、学習指導要領の「不断の見直し」を文部省(当時)は標榜したのだから、無理筋には当たらない。
 現行の学習指導要領には、次期の“形”が内在する。第1章「学習内容の重み付けと『教育プログラム』化が課題―二度の改訂に携わった内閣府の合田哲雄審議官に聞く」(肩書は当時)、第2章「コンピテンシーからコンテンツを整理し、行政はその支援を―カリキュラム研究の立場から奈須正裕・上智大学教授に聞く」を読むと、それが実感できる。ぜひ多くの教育関係者に読んでもらいたい。
 次期の改訂課題だけでなく、現行の学習指導要領を深く理解できる。学習指導要領作成に影響を与えたキーパーソンらの知見の豊かさもさることながら、それを引き出したのは教育専門紙記者から教育ジャーナリストに転身し、その生業を支えるため、磨き続けた著者の課題意識であることは言うまでもない。
 「誤解だらけの2000年代教育改革」(第3章)や「政治・行政の間で揺れる教育の行方―改革の主導権をめぐる『霞が関の隘路』」(第4章)なども、今風に言えばエッジの効いた論考である。
 ウィズコロナ、1人1台タブレット端末と、絶えず変化する教育の風景をどう切り取るか、今後の著者の仕事にも注目したい。
(1870円 ジダイ社)
(矢)

書評

連載