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「こどもまんなか社会」実現図る「こども家庭庁」4月発足(動画あり)

4面記事

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小倉 將信 こども政策担当相

 今年は4月に新しい省庁として、内閣府に「こども家庭庁」が発足する。その準備を中心となって進めている小倉將信・こども政策担当相に、これまでの経緯や、こどもに関する政策の方向性を尋ねた。

いじめ対応、第三者性の担保に力

 ―これまで、「こども」を巡る政策には、どのような課題があったのでしょうか。

 わが国の少子化は深刻な状態にあります。政府として早くから危機感を持って対策に取り組んできましたが、歯止めがかかっていません。
 6割以上の人が「日本は子育てに優しくない社会だ」と感じているとの調査結果があります。スウェーデンでは、自国が子育てに優しくないと感じている人の割合はわずか2%だそうです。こどもを産み育てることが楽しく明るいものだと思ってもらえるような、こども政策にしていかなければなりません。
 少子化に加え、こども自身を巡る課題も深刻です。児童虐待、不登校が過去最多を更新しています。今、こどもを巡る状況は極めて厳しいと言えます。
 これから、少子化対策とともに、こども一人一人を大切にし、こどもの幸せ、最善の利益を第一に考えて、こども中心の施策を進めていかなければなりません。そのために、こども家庭庁を設けることとなりました。

就学前の育ちの指針を策定へ

 ―こども家庭庁の具体的な役割は。

 こどもに関する施策を所管する省庁は多岐にわたります。こども家庭庁は、こども政策に関する総合調整を行い、司令塔機能を担います。
 保育所、幼稚園、認定こども園といった就学前の子どもたちが過ごす場に通っていない「未就園児」も含む就学前の全てのこどもの育ちを保障するための指針の策定や、こどもの居場所づくりに関する指針の策定に向けた検討に着手しました。
 こどもを巡る課題が省庁のはざまに落ちないようにすることが、こども家庭庁の役割の一つです。そういったことを念頭に置き、4月を待たずに、強い司令塔機能を準備段階でも発揮できるようにしていきます。

 ―文科省との役割分担は。

 こども家庭庁の設置法案を巡ってさまざまな議論がありました。児童福祉など、育ちに関わる行政はこども家庭庁の下で、教育など学びに関わる行政は文部科学省の下で、それぞれの専門性を発揮しながら、充実させていくことになります。
 「こどもまんなか社会」の実現のためには、文部科学省とこども家庭庁の緊密な連携が重要です。
 こどもを預かる施設は幼稚園、保育所、認定こども園とさまざまあります。これらの施設での、教育・保育の質を保障するために、その内容の基準は、こども家庭庁と文部科学省との双方向協議を行い、共同で告示します。
 また、先ほど申し上げた、「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針(仮称)」は、こども家庭庁を中心に策定し、文部科学省の領域も含め、こども家庭庁が責任を持って指針を示していきます。
 いじめ問題に関しては、昨年11月に、関係府省の連絡会議を設けました。こども家庭庁設立準備室長と文部科学省初等中等教育局長が共同議長を務めることとなりました。
 いじめ問題は、学校内外の社会の至る所で発生する可能性があります。ネット空間での対応も極めて重要です。文部科学省以外の府省庁が参画し、対応していくこととなりました。
 学校で起こるいじめは、校内に加害側と被害側の両方がいる場合が多くなります。場合によっては、学校が行司役となるのではなく、第三者性を担保して、公平かつ客観的にいじめを防止し、発生時に対応していく必要もあります。こども家庭庁としては、そういった第三者性の担保に力を入れていきます。
 これまでは文部科学省中心でしたが、こども家庭庁準備室を含めて関係府省が入ることで、いじめ対応をさらに充実させられると考えます。
 不登校問題は引き続き、主として文部科学省が所管しますが、不登校の児童・生徒が安心して過ごす場は学校に限りません。学校外の居場所の確保は、こども家庭庁でも文部科学省と連携して進めていきたいと思っています。

こどもの意見を「大綱」検討に生かす

 ―これまで、こども家庭庁設立準備室では、さまざまな年齢のこども、若者から意見を募ってきました。どのような意見が政策につながりそうでしょうか。

 こども家庭庁創設後、こども基本法に基づいて、政府全体のこども政策の基本的な方針として、こども大綱を策定します。こども基本法では、こどもや若者の意見を取り入れた上で政策を実施すると記しています。
 これまで、「こどもまんなかフォーラム」として、小・中学生、高校生から20代の皆さん、若者団体の代表の皆さん、子育て当事者や支援団体の方々などに集まっていただき、こども家庭庁への期待や国に取り組んでほしいことについて、お話を伺っています。
 私自身も児童館をはじめ、こどもが集まる場所にお邪魔して、小学生から高校生の皆さん方に話を伺ってきました。
 これだけこどもや若者の意見を真正面から行政が聞いて政策を考えるプロセスは、これまでの中央省庁にはなかったのではと思います。
 まだ、どの意見を政策につなげていくか言える段階ではありませんが、例えば、いじめの問題や、こどもの居場所に関して、当事者であるこどもの意見と、われわれ大人だけが考えているものの間には、ギャップがあると思いました。そのギャップを、こどもたちから直接意見を聞くことによって埋めていきたいと思っています。
 こどもや若者から頂いた意見は、こども大綱について検討することになる有識者会議の場で報告して、大綱の策定に向けた検討に生かします。

教職員・保育士が安心し子と向き合える環境整備

 ―今、教職員や保育士に直接、訴えたいことは。

 全国の教職員、保育士の皆さまにおかれましては、日々こどもたちの未来のためにご尽力をいただきまして、本当にありがとうございます。全てのこどもの健やかな成長を保障する上で、教育、保育の質の向上を図ることは極めて重要です。
 そのためにも現場で日々一生懸命頑張っていただいている教職員や保育士が余裕を持ってこどもたちに接することが極めて重要です。
 教職員については文部科学省が、保育士はこども家庭庁を中心に、両者がそれぞれ連携しながら、皆さま方が安心をしてこどもに向き合える環境の整備に努めてまいります。
 私が大臣に着任をしてからも、送迎バスにおけるこどもの置き去り事故や、いじめに関する事件や事故が発生しています。被害に遭ったこどもとその保護者は、大変つらい思いをされていることを感じます。政治や政府は責任を持って、対応しなければいけません。
 同時に、現場を預かる教職員や保育士は、今、皆さま方が背負っている職責の重さ、こどもの命や育ちを任されている職責の重さを日々感じながら、真面目に誠実に一生懸命頑張っていただいていると思います。
 事故や事件が発生すると、全体に対して不安のまなざしが向けられることもあり得ると思います。真面目に頑張ってくださっている皆さま方が心や精神の負担なく、これからも業務に向き合えるように、事故や事件の再発防止策を政府が責任を持って、場合によってはデジタル技術に対する財政的な支援も含めて実施していかなければいけません。
 私どもは現場で一生懸命頑張っている皆さま方が、どうやったらこれからも頑張ってくださるかといった視点に立って、日々、政策の議論を重ねていることをどうかご理解をいただきたいと思います。
 最後に、「こどもまんなか社会」の実現のためには、こどもや若者の意見を尊重していくことが何よりも重要です。教職員、保育士の皆さまにおかれましては、こども基本法を一度お読みになり、同じ考えを共有し、社会一丸となって、こども家庭庁がこれから取り組まんとする「こどもまんなか社会」に向けて、一緒になってお支えをいただければと思います。
(まとめ・構成、日本教育新聞社)

 おぐら・まさのぶ 東大法卒後、日銀勤務を経て平成24年衆院初当選。昨年8月からこども政策担当相。閣僚として、共生社会、女性活躍、孤独・孤立対策なども担当。41歳。衆院東京都第23区(町田市、多摩市)選出。当選4回。

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