日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

学びが地域を創る ふつうの普通科高校の地域協働物語

13面記事

書評

山根 俊喜・武田 信吾・今井 典夫・藤井 正・筒井 一伸 編著
廃校危機に動いた学校、応えた人々

 学級減の危機感解消のため教育の特色化や、全国募集の類型設置に踏み切った兵庫県立村岡高校が選択したのは「地域とともに歩む学校」への転換。高校の動きに呼応し、地元の行政、住民、鳥取大学地域学部の研究者、学生らがそれぞれの立場から、生徒たちの地域での学びを支えた。結果、地域の良さが見直され、地域に活気が生まれ、学び終えた生徒たちが地域を支える側に加わるという好循環を生むまでになった。この歩みを当事者たちが語っていくのが、本書の大きな特徴だ。
 地域創造類型の発足とともに誕生した学校設定教科「地域探求」、その後の「総合的な学習(探究)の時間」などに関わった教員、地域の人々の視点で語る「地域に学び、地域が学ぶ現場10選」(第1部)、同校の誕生から地域創造類型設置の経緯、新任教師や教育コーディネーター、卒業生、保護者が思いをつづった「村岡高校と地域の物語」(第2部)、かじ取りをしてきた歴代校長たち、カリキュラムづくりに関わった教員が「教育実践の基盤となるもの」(第3部)を語り、第4部では実践を「新しい学びと地域の変化―地域を育てる学力」として分析、今後を展望している。
 統廃合問題に悩む各地の高校に光明を照らす取り組み。大学の踏み込んだ協力や、高校を支える住民の確保などは容易ではないかもしれないが、地域とともにある学校を目指したい関係者には示唆にあふれる一冊だ。
(2200円 学事出版)
(矢)

書評

連載