ざんねんな先生 教育界初!「非常識な現場」を大告白
12面記事有馬 心一朗 著
実践振り返り思索深める材料に
著者の「執筆の狙い」には「子どもたちを不幸にする先生たちと出会ってしまった場合はどうすればいいのか」について、「筆者自身の成功事例と失敗談を交えながら具体的に示していきたいということ」とある。「子どもたちを不幸にする教師」という言い方に私は首をかしげた。私の出会ってきた教師を思い浮かべても、ちょっと思い当たらない。
国語の授業の音読について「列ごと」に読ませるのは「最低」と断じ、「一文交代読み」が「音読の力をつける」と書いているが、そう言えるのだろうか。本当にそうなのだろうか。
修学旅行は、教師にとって「過酷のひと言に尽きる」と言い、「濃厚ブラックでしかない」そうだ。その理由は「時間の制約や準備などで心身ともに疲労するからだ」とあるが、「心身ともに疲労する」から「ざんねん」とは限らない。充実感を得る教師もいるはずだ。
「ざんねんな事例」を数多く挙げてあるが、それらは、善良で優れた教師にとっては自らの実践を振り返る参考にはなるだろう。だが、肝要なのはそれらの事例が、なぜ「子らを不幸にする」ことになるのかという考察、分析であり、さらには、なぜそのようなことになるのかという原因や要因に対する深い洞察、究明である。
そのような思索を読者に促すことになるならば格好の事例集として役立つ本だとは思う。評者の率直な読後感である。
(1980円 新評論)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)