海水の酸性化を学ぼう SDGs巡る課題示す NPOがシンポ
2面記事 NPO法人の理科カリキュラムを考える会(滝川洋二理事長)は13日、二酸化炭素の大量排出により、海水が変化し、生態系に影響を及ぼす「海洋酸性化」を主題に、今後の理科教育について協議するオンラインシンポジウムを開いた。滝川理事長は、現在のSDGs(持続可能な開発目標)を巡る学習の課題を示すとともに、地球温暖化問題とは別の観点から二酸化炭素排出問題を考えるきっかけになるなどと訴えた。
海洋酸性化に詳しく北極海での調査航海に参加してきた川合美千代さん(東京海洋大学学術研究院准教授)の講演によると、大気中の二酸化炭素が増えることにより、海水のアルカリ性が弱まり、酸性に近づく。酸性に近づくことで、甲殻類の成長が難しくなるなどの影響が出る。
人間にとっては、影響を受ける海産物の入手が難しくなるといった課題につながっていく。
この問題は、NHKが今年7月、テレビ番組で報じているが、地球温暖化問題と比べると、まだ、日本での関心は極めて低い状況にある。
滝川理事長は、自身が代表を務めるNPOを通し、この番組に、海洋酸性化に関連した実験の方法を提供した。シンポジウムでは、ペットボトルを使って水に二酸化炭素が溶け、水が酸性になることが分かる実験などを示した。
この実験では、キャップで密閉したボトルを振り混ぜると、二酸化炭素が水に溶けて、ボトルがへこむ。水には酸性度が分かる薬剤が混ぜてあり、二酸化炭素が溶けると色が変化した。
滝川理事長自身は当初、海洋酸性化問題にはあまり知識がなく、この番組が完成してから、改めて衝撃を受けたという。その後、科学に関する催しで、海洋酸性化に関するライブショーを行うなど、広く知ってもらうように努めてきた。
地球温暖化問題には、疑問視する声があることを踏まえて滝川理事長は、海洋酸性化問題について、「温暖化問題に対する批判に対して、別の側面から二酸化炭素を減らさなければいけないという提案ができる」などと話した。
学校教育で、SDGsを広く扱うようになる中、「ちょっとしたこと(行動)を教えるだけでいいのか」と課題を示し、「子どもたちに、今できることだけを求めない。大切なのは、問題があることを知ること」「長い目で見ると、社会を変える人に育ってほしい」などと話した。