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学校組織の解剖学 実践のなかの制度と文化

16面記事

書評

鈴木 雅博 著
実践の成り立ちに目を向ける

 「解剖学」といういささか刺激的なタイトルは、本書が研究方法論として採用しているエスノメソドロジーの創始者H.ガーフィンケルの共同研究者としてこれを深化させたH.サックスの著作から援用したもの。
 本書によれば、エスノメソドロジーとは、「人びとが日常生活の実践のなかで/として社会的事実を成し遂げる方法の論理およびそれを対象とした研究」であり、学校組織を「解剖」の対象とする同書では「教師たちが実践のなかで/として学校組織をまさにそのようなものとして成し遂げる、その方法と能力を解明すること」を目的とする。
 学校組織に関する先行研究が「実践それ自体の成り立ちを直接の研究対象としてはこなかった(見落としてきた)」という批判意識が本書の前提にある。
 この目的のために、対象校での長期にわたる会議場面の観察や関係者への面談等が設計・実施されている。職員会議における「沈黙」の意味や、先行する会議で審議に関与した者は後続する会議で事案に異議申し立てを控えるべきであるという規範が民主的な合意形成にどう影響しているか等、従来の研究が「見落としてきた」かどうかはともかくとしても、教師の相互行為において生成する複雑な論理をリアルに描いている点は大変興味深く、著者の経歴でしか書けない一冊である。
(7150円 勁草書房)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

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