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福島復興「ドリームプロジェクト」その後 「また会えたね!10年ぶりの100キロハイク」【第5回】

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論説・コラム

 東日本大震災が起こった翌年の夏、福島県内の小学校5、6年が2週間に渡って寝食を共にし、福島の復興に向けて仲間を作り、さまざまな経験を積んだ「なすかしドリームプロジェクト」から今夏で10年。この催しに参加した当時の小学生と運営スタッフが再び福島に集い、徹夜での100キロハイキングに臨んだ。再会を果たした「元小学生」は果たして歩ききれるのか。同行取材に基づき小説としてまとめる。

 午前4時を過ぎた。タンクトップ姿でも暑かった日中を終えて、深夜はほどほどに快適な服装だったが、標高千メートル前後の高原地帯のこと。夜明け前には寒さを感じる。
 10年前には小学生だった4人には、当時の那須甲子青少年自然の家の職員が徒歩と自動車で付き添う。自動車には記者の防寒具もあり、次の休憩場所では着ようかと思っていたころ、夜は明けた。
 50キロを超えた。同じくタンクトップ姿の鈴本校長を除けば、歩いているだれからも疲れの色が見える。話し続けていた学生たちもだまりがちだ。この間、男子学生2人が自動車に乗り込み、回復を目指す。
 スタート地点から歩き続けている学生は、女性2人だけとなっていた。
 その2人もつらそうだ。今回の100キロハイキングでは、1人また1人と足の裏をやられていく。
 記者もその1人に加わった。当初は、ゴム製のすべり止めがついた靴下のせいだと思っていた。だが、いよいよ痛みがひどくなり、靴下を脱ぐと、見事な水ぶくれ。車に乗り込んだ男子学生も、歩き続ける女子学生も同じ症状に悩まされていたのだった。
 なぜ、こんなことが起こるのか。100キロのマラソンでもトレイルランニングでも経験したことはない。恐らく、水平方向の歩行中、靴底と足の裏が歩くたびにこすれ合うせいなのだろう。マラソンなら、靴の中で足が動くことはあまりなく、トレイルランニングなら、上下方向の動きがあるため、足へのダメージが分散されるからではいか。そんな仮説を思いつつ…猛烈な睡魔が襲ってくる。まっすぐ歩けない。ひたすら、一行を追う。
 足の裏の痛み。睡魔。さらに追い打ちをかける苦難が待ち受けていた。「虫」だった。そんなことは気にもかけず、66.5キロ地点のスキー場で朝食となる。ほっとできたのは束の間だった。
 残りは25キロ。食事を終えて歩き始めると、足首がはれてきた。やっかいな虫、それは「ブヨ」。払いのけてようやく、その存在に気付いた。もう何カ所もやられていた。かゆみといたみ。熱も感じる。この足で25キロももつのか。

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