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SNSいじめ(ネットいじめ)の問題点と学校に求められる対応

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特集 教員の知恵袋

 内閣府の『令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)』によると、調査対象3,194人の満10歳から満17歳の青少年のうち、インターネットの利用率は93.2%との結果が出ています。

 また、インターネットを利用する際に使用するデバイスで最も多いのがスマートフォンとなっており、全体の63.3%がスマートフォンでインターネットを利用していることが分かりました。

 インターネットの利用が当たり前となった今、懸念されるのは児童・生徒がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上でいじめを行ったり、いじめられたりする可能性です。今後さらに増加が見込まれるインターネット上でのいじめに対して、教育者としてどのような対応を行えばよいのでしょうか。

 この記事では、インターネット上のいじめの問題点や実態とともに、学校に求められる対応策を解説します。

出典:内閣府『令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)

“SNSいじめ”とは

 SNSいじめとは、SNSを通して、特定の児童・生徒に誹謗・中傷を行ういじめのことです。インターネット上で行われることから、“ネットいじめ”とも呼ばれます。

 たとえば、次のような行為がSNSいじめに当てはまります。

SNSいじめの例
・SNS上に特定の児童・生徒の悪口を書く
・SNS上で特定の児童・生徒を無視・仲間はずれにする
・インターネット上の掲示板に、特定の児童・生徒の個人情報を書く
・インターネット上の掲示板に、特定の児童・生徒になりすましていやがらせを書き込む

出典:総務省『ネットいじめは何がこわいの?』/文部科学省『「ネット上のいじめ」に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け)【概要】

SNSいじめの問題点

 SNSいじめの大きな問題点は、不特定多数の人から特定の児童・生徒に対する誹謗・中傷が集中的に行われ、短期間で極めて深刻な被害になることもある一方で、それらが誰によって行われたかを特定することが困難なことです。

 インターネットの匿名性によって誰もが気軽に書き込めることから、児童・生徒自身が被害者にも加害者にもなりやすいというリスクがあります。

 また、情報の収集・加工が容易にできてしまうため、児童・生徒の個人情報や画像がインターネット上に流出して、悪用されてしまう可能性もあります。

 さらに、教員や保護者など、身近な大人が児童・生徒のインターネットの利用状況を把握しにくいことも問題点の一つです。これにより、SNSいじめの発見や対策を講じることが困難となってしまいます。

SNSいじめの実態

 文部科学省は、国公私立の小・中学校、高等学校、特別支援学校等を対象に、毎年いじめや不登校に関する調査を行っており、“児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査”で調査結果を公表しています。

 2016~2020年の調査結果によると、全学校数において、いじめを認知した学校数の割合は増加傾向にあったものの、2020年度に減少しています。

 一方で、“パソコンや携帯電話を使ったいじめ”の件数は、年々増加傾向にあります。

2016~2020年の推移
・2016年度:10,779件
・2017年度:12,632件
・2018年度:16,334件
・2019年度:17,924件
・2020年度:18,870件

出典:文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』(2016~2022年度)

SNSいじめへの対応

 SNSいじめから児童・生徒を守るためには、学校や家庭で適切な対応を行うことが欠かせません。

 児童・生徒にインターネット上の情報の扱い方を理解してもらうとともに、教員がSNSいじめを発見するための取り組みが必要です。

 ここでは、学校や保護者などが行うべきSNSいじめへの対応策を2つ紹介します。

情報モラル教育の強化

 1つ目の対応策は情報モラルの強化です。小学校の低学年段階から、児童・生徒に情報モラルを確実に身に付けさせる取り組みが求められます。

 情報モラル教育に関しては、国が作成した教員向けの指導モデルカリキュラムやWebサイトなどを活用して、教員の指導力向上を図ることも重要です。

 また、名誉棄損や児童ポルノに関連する犯罪行為として扱われるべきいじめの事案に関しては、匿名性の高さや拡散性を踏まえて、警察と連携しながら適切に対応することが必要です。

 情報モラル教育の詳細は、こちらの記事で解説しています。

→【情報モラル教育とは?取り組みの内容やポイントを解説】

ネットパトロールの実施

 2つ目はPTAや教育委員会、地域ボランティア、関連企業などと連携しながら行うネットパトロールの実施です。

 ネットパトロールでは、学校の非公式サイトやブログ、SNSなどをチェックして、誹謗・中傷の書き込みが行われていないかを確認します。

 総務省が2018年に行った『いじめ防止対策の推進に関する調査』では、全国の20県教委および40市教委の計60教委のうち、65%を占める39教委が「ネットパトロールを実施している」と回答しました。今後は、この割合をさらに高める必要性があるといえます。

 また、ネットパトロールで、インターネット上の誹謗・中傷を発見した際は、文部科学省が配布する“対応マニュアル”に沿って迅速かつ適切な対応を行うことが重要です。

出典:総務省『いじめ防止対策の推進に関する調査

求められる情報モラル教育と保護者・地域との連携

 スマートフォンやパソコンを使って、誰もが簡単にインターネット上での情報収集、SNS・掲示板への書き込みを行えるようになったことに伴い、児童・生徒によるSNSいじめは年々増加傾向にあります。

 児童・生徒を被害者にも加害者にもしないように、学校には、情報モラル教育の取り組みやネットパトロールなどの対応策の実施が求められます。

 また、教員や児童・生徒だけでなく、保護者、地域を含む関係者全員が情報モラルについて理解して、インターネットを安全に使うよう心がけることが重要です。

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