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【寄稿】学級に心理的安全性を

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 高校教員時代には、生徒間の人間関係づくりに工夫を凝らした経験を持つ山口権治さん(浜松市教育総合支援センター心理専門相談員、第一学院高校顧問)から「心理的安全性とアクティブラーニング」と題する論考が届いた。今後の学級づくりに向けた提言となっている。

学級に心理的安全性を

 心理的安全性とは、組織の中で「何でも話せる」という安心感です。この言葉が注目されるようになったのは、グーグル社が「効果的に動くチーム」の力学を調査するプロジェクトを立ち上げ、その研究結果を発表したことがきっかけでした。
 ここで特定された5つの成功因子のうち、最も重要とされたのが心理的安全性です。心理的安全性の高いチームのメンバーは意欲が高く、他のメンバーの発案による多様なアイディアを上手に活用できること、課題達成率が高いことが分かりました。
 心理的安全性をつくる4つの要素は、

 ・何を言っても大丈夫という「話しやすさ」
 ・困ったときはお互い様という「助け合い」
 ・とりあえずやってみようという「挑戦」
 ・異なる価値観を持つ人もどんと来いという「新奇歓迎」

 ―です。この4つの視点に基づいて考えると、日本の教育の課題が見えてくるのではないでしょうか。
 例えば「話しやすさ」についてです。日本は欧米よりも集団主義的傾向が高く、同調圧力が生まれやすいと考えられます。
 また、学級にはカーストが存在することが多く、権力のある生徒に対する「忖度」も生じやすいのではないでしょうか。ある中学生の川柳、「教室はたとえていえば地雷原」に象徴されています。
 意見が対立して人間関係にひびが入ることを恐れるあまり、言いたいことが言えない。課題を見つけて報告すると、褒められもせずに役割だけが増える。トラブルが起きると、犯人探しが始まる…。先生方の学級も、そんな「心理的安全性が低い学級」になってはいないでしょうか。このような状況ではアクティブラーニングは期待できません。
 現代は、「変動性」「不確実性」「複雑性」「曖昧性」の頭文字をとってVUCAと言われています。先行きが不透明で将来の予想が困難な「正解」のない時代ということです。こうした時代には、話し合いによって見出される「納得解」が意味を持ちます。つまり、生産的で建設的なアイディアを出すために、健全に意見を戦わせることのできる学級づくりが求められているのです。
 そのためには良好な人間関係を築くための「傾聴」技法、価値観の多様性から引き起こされる課題を解決する方法「課題解決スキル」さらには意見の対立が起きたときに客観的事実とお互いの気持ちを理解し、合意の形成に導くという「対立解消スキル」(メディエーション)の技術が求められます。
 変化の激しい時代を生き抜く上で、学び続けることは不可欠です。傾聴や課題解決スキル、対立解消スキルを学んで心理的安全性を高め、納得解を導き出しながらチャレンジする学級でこそ、アクティブラーニングが実践可能になり得るのではないでしょうか。

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