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新しい学びに対応した教育環境を

13面記事

施設特集

1人1台端末を有意義に活用するために
 文科省が有識者の議論のもと「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方」についてまとめた報告書では、学習空間を均質で画一的なものから、柔軟で創造的なものに転換することが提言されている。具体的には、1⼈1台端末環境等に対応した机を配置し、多様な学習を展開できる教室環境、個別学習や少⼈数学習など柔軟に対応できる多⽬的スペースなどの整備である。
 とりわけ、1人1台端末の活用では、従来型の一斉授業ではなく、子どもが自ら考え、分からないことは調べ、仲間と話し合い、比較し合って最適解を導き出す授業スタイルの構築が求められている。したがって今後の学校施設には、そうした学びに順応した多様な学習空間や学校用家具を用意することが望まれているのだ。
 しかし、現実には各種ICT機材やタブレットの導入で教室・机面積がさらに手狭になり、アクティブ・ラーニング型授業に対応できる多目的教室の整備率も3割に留まっているのが実態だ。

机上面を拡張するツールが人気
 教室が狭くなっている理由は、ICT教育の充実に伴って電子黒板やプリンターといった周辺機器の設置が増えているところに、新たにタブレット充電庫も加わることになったからだ。同じく、机の上も教科書だけでなくワークシートや副教材を一緒に広げることが一般化しており、そこにタブレットが追加されたことで机面積がより窮屈になってしまった。それゆえ、教材を自由に広げることができない、タブレットと併用しながら学習できないなどの弊害が生まれている。
 こうした中、今ある机の面積を簡易に広げることができる拡張ツールが登場し、人気を呼んでいる。たとえば、天板にアタッチメントをつけて拡張する、天板の上にカバーを取り付けて机面積を広げるといった製品となる。いずれもタブレットの落下を防ぐガードが付いているのが特長だ。また、もっと手軽なタブレットの落下防止に特化したパーツも販売されている。

子どものモチベーションを上げる学校用家具
 一方、多目的教室の整備が遅れている中では、教室以外の学校にあるスペースを学びの場として活用していくことが考えられる。例えば、少人数のグループワークや意見を交換する場としては廊下や階段なども活用できる。そこにちょっとしたパーテーションやテーブルを置けば簡易のコミュニティースペースにもなる。あるいは、図書室やコンピューター教室、体育館なども、ふだんの授業からもっと活用できるはずだ。このように教室だけでなく、学校のあらゆる場所の空間としての価値を見直し、多様な学習の機会に活用していく工夫が求められる。
 その上で、近年では学校用家具も進化しており、学習形態に合わせて容易にレイアウト変更が可能なもの、スタッキングなど収納性に優れたもの、リラックスできる木製の机・椅子など幅広いバリエーションが登場している。いつもと違う環境やシチュエーションでの学習は子どものモチベーションを上げ、自由な発想や新たな気づきを生み出すきっかけになる。主体的な学びが求められる中で、画一的でない学校用家具によって引き出される教育効果もあるはずだ。
 GIGAスクール構想によって、学校での学び方や指導スタイルが大きく変わろうとしている。だが、そうした学びの場となる教育環境が旧態依然としたままでは、片落ちといわざるを得ない。目指す方向性と環境面が一致してこそ改革は生まれるものであり、どちらが欠けてもその歩みは遅くなるからだ。教員にチャレンジする意識を与え、子どもの力を最大限に引き出すためにも、教育環境を改善していく必要がある。

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