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未来志向の大学入試デザイン論

18面記事

書評

大阪大学高等教育・入試研究開発センター 編
多面的・総合的評価の設計と専門家育成

 大阪大学では昨年度から、大学入試の専門家養成を目指して「履修証明プログラム」の提供を始めた。文科省概算事業「多面的・総合的入試選抜改善システム構築」を受け、6年かけて開発した「Handai Admission Officer」(HAO)育成プログラムを4年間、試行した結果である。
 本書は、その「履修証明プログラム」の「基本テキスト」として編まれている。
 高大接続改革の歴史と展望、世界の入学者選抜に見る多面的・総合的評価、大学入試設計と入試募集広報、多面的・総合的評価の方法論、入試専門家の育成論の5部構成の下、全20章を配した。
 1点刻みの選抜の不毛性を脱し、「多面的・総合的」に志願者を評価するというのが、わが国のトレンドではあるが、「多面的・総合的」に評価するための体制は十分だろうか。
 それは例えば、プログラム開発のために参考にし、本書でもII部で紹介したアメリカ、韓国の「総合的入学者選抜方法」や、V部で解説される「米国・韓国における入試専門職の状況」を読むと、日本との違いに驚くだろう。両国では入試専門家を手厚く配置し、時間をかけて人材を選び抜く体制を整えている。
 入試専門家について関心のある方だけでなく、大学入試についての理解が求められる高校の進路指導担当の先生方にとっても、有益な本ではないだろうか。
(2750円 大阪大学出版会)
(矢)

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