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児童虐待における司法面接と子ども支援 ともに歩むネットワーク構築をめざして

14面記事

書評

田中 晶子・安田 裕子・上宮 愛 編著
事実確認と心のケアの両立図る

 学校現場では、ほとんど耳にしない「司法面接」という言葉には二つの目的がある。一つは、子ども自身の言葉で正確な情報をより多く引き出すこと。二つ目は、子どもの精神的な負担を最小限にとどめることである。これは一般に供述弱者と呼ばれる立場の人の「自分の言葉で、自分の意思や主張を表す権利」を守るという一点に対する重要な配慮である―という記述に、私は胸を突かれる思いがした。
 教師という立場は、ともすると問い詰めたり、尋問したりという強圧的な態度に陥りがちなのだと反省させられた。書名の「児童虐待における」という言葉が示すように、いうなれば本書は、特殊な事態、状況下における面接法の解説書である。だが、その底に流れる理念は、あくまでも子どもの人権と福祉を尊重し、子どもの将来の自立、生涯の幸福に培うというもので、学校教育に携わる一般の教員にとっても、多くの深い示唆を得られること間違いない。
 虐待を受ける子どもの中には、さまざまな障害のある例も多く見られる。それら個々への「心のケア」の在り方は原理的に割り切れるものではない。多様な個別の事例、環境、要因などに即して、根気強く、優しく、しかし正しく進められなければならない。司法面接という用語に初めて正対した私は、未知の分野に存在する固有のご苦労とご努力に敬服するばかりだった。
(3850円 北大路書房)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)

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