GISで情報収集、まとめる授業へ 新科目 高校はいま 上
10面記事タブレットを活用して議論する生徒たち=武蔵野大学中学校・高校提供(一部を加工しています)
地理総合
高校の地理歴史科で必履修科目になった「地理総合」は、
・地図や地理情報システム(GIS)で捉える現代世界
・国際理解と国際協力
・持続可能な地域づくり
―を学習する新科目。情報を収集・まとめる技能を身に付けたり、課題解決の力を養ったりすることを目標としている。
新たに活用がうたわれているGISは、地図情報を表示・分析できる電子ツール。千葉県立千葉高校で1年生の地理総合を担当する太田貴之教諭は1学期、学校周辺の地図作りを実施した。
使用したのは国土地理院が提供している「地理院地図」など。土地の起伏を色別したり、標高の断面図を表したりできる他、作図機能もある。生徒には、土地利用の変化や通学路の特色など思い思いのテーマの地図を作らせ「グーグルドライブ」で発表させた。GISに初めて触れる生徒たちも、地図作りを楽しんでいたという。
2学期以降は防災の学習でGISを使う予定だ。世界の地形や気候の単元で、グーグルアースの機能を使い、特徴的な場所を巡ることも構想しているという。太田教諭は「地理総合は生徒自身が資料や地図を使い、調査や考察することが大切だ」と話す。
地球環境や人口問題などの学習でGISを活用したのは武蔵野大学中学校・高校(東京都)の糟谷武志教諭だ。担当するコースでは「国際理解と国際協力」の単元を中心に授業を設計。前期の授業では、地図の種類や見方などを学んだ後、単元にある資源・エネルギー問題などを扱った。夏休み明けには、生徒たちに関心のある国を1カ国選ばせ、GISを使った調べ学習に取り組むという。
「生徒全員が同じ地図を見て、教室全体で情報を共有できるのが紙の地図のメリット。それに対して、GISは生徒ごとに目的に応じた地図情報に触れられる。個別最適な学びにもつながり、調べ学習との相性も良い」と糟谷教諭。紙の地図とGISのそれぞれの特徴を踏まえて活用することを提案している。
地歴科教員の地理の専門性をどう高めるか。地理総合は、令和7年度入学の大学入学共通テストで出題されることが決まっていて、教育委員会も対応に力を入れている。
神奈川県教委は地歴科教員の初任、5年目、10年目の研修にGISの使い方や指導法を取り入れた。県教委の担当者は「高校でも1人1台端末の活用が広まっている。多くの教員にGISの学習に必要な知識や指導技術を身に付けてほしい」と話す。
複数の地理関連学会でつくる地理学連携機構は、地理総合の必履修を受けて「地理教育フォーラム」を設立。高校教員向けのオンラインセミナーの開催や教材用素材の公開をしている。
新学習指導要領の開始で本年度から始まった新科目を高校現場ではどう教えているのか。3回で伝えます。