「鍛える国語教室」研究会創立三○周年記念
「鍛える国語教室」研究会　著
柳谷　直明　編著
「授業名人」の極意と人間的魅力

　本書は当代の国語授業名人といわれている野口芳宏氏の国語授業で形成される「国語学力」の解明に焦点を当てた画期的な労作である。
　現在、各大学の教員養成課程で国語科授業に関した講義やゼミを行っている研究者は、本書を熟読され、学生にどのような国語授業力を求めるのか、ぜひ振り返ってほしい。
　例えば、第一部第４章のタイトルは「野口芳宏漢字指導実践史」になっている。この章を読むだけでも、野口氏の漢字指導の極意が分かる。
　「伝統的な言語文化」指導実践史、古典指導実践史、話し方指導実践史、作文指導実践史、説明文指導実践史、物語文指導実践史、詩歌指導実践史等々、野口氏の国語の実践は裾野が広い。恐らくここまで一人の教師の実践が、記録に残っていたことはなかっただろう。
　どの領域も野口氏の授業から学べることを抽出している論考になっている。もちろん、野口国語の一方的な礼賛の研究書でもない。野口実践を評価しながらも、課題にまで言及が行われているからである。
　なお本書は国語人野口氏の人間的魅力もたっぷりと紹介されている。例えば第二部第２章「教師人生パラダイス」（小林智氏）。教師の在り方を野口氏の姿を通して学ぶことができる。本書をまとめた執筆者各位に感謝したい。
（２９７０円　溪水社　プリントオンデマンドサービス）
（庭野　三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員）