父子で考えた「自分の道」の見つけ方 「正解」を選ぶのではなく選んだ道を「正解」にすればいい!
15面記事野口 絵子・野口 健 著
成長を支えるオンライン対話
「日本に帰りたい!と強く思うその気持ちを堪えて、今のこの状況は自分に与えられたチャンスだと思い、このチャンスを有効に活かしたい」と言う絵子さんは今18歳、ニュージーランドに留学中。コロナ禍で帰国できない状況だ。
これに対して「これが絶対正解、ということはない。選んだその道を正解にしていけばいい」と語る父親は世界的なアルピニストの野口健氏である。
思春期は家族との対話が減るのが一般的、とりわけ父親との対話が乏しくなりがちだ。本書は、それが見事に乗り越えられた、うらやましいほどの「父子オンライン対話」の範例だ。この対話から「むしろ僕の方が、学びや発見が多かった気がしますが、ひとまわりもふたまわりも成長した絵子さんとの再会を楽しみにしています」とやりとりを振り返るアルピニストの父親の言葉は、この対話の魅力と充実ぶりを雄弁に伝えて感動的である。
内気で運動が苦手だった絵子さんが、真冬の八ヶ岳の初登山から、ついにキリマンジャロ登頂を果たすほどに並外れたたくましさを身に付けていく迫真のドラマは「父子のオンライン対話」が具体を伴って語り伝えてくれる。「コンプレックスがかきたてたエネルギー」「心をつないでくれたのは山だった」「楽な道は楽しい道にならない」などなど、父子対話から生まれた珠玉の名言にも啓発され続けた。
(1650円 誠文堂新光社)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)