仕事の幅広げた工夫など語る 全国視覚障害教師の会40周年式典でシンポ
2面記事 視覚障害者の教員らでつくる全国視覚障害教師の会(藤本恵司代表)は3日、40周年式典をオンラインで開催した。現役の視覚障害教員による記念講演やシンポジウムがあった。シンポジウムでは、遠足等の行事や校務分掌に関して視覚障害のある教員がどのような仕事を担えるかなどについて発言があった。
同会は昭和56年に大阪で設立。生まれつき全盲の教員や中途失明の教員、視力の低下に悩んでいる教員や教員志望者で構成している。勤務先は、小・中学校、高校、特別支援学校などで、会員数は100人を超えている。メーリングリストでの意見交換や年3回の全国研修会で教育実践の交流などの活動を行っている。
記念講演で四天王寺大学の愼英弘名誉教授は、視覚障害がありながら教員を続ける上での課題として「視覚以外の障害のある児童・生徒への指導」「同僚との関係づくり」などを挙げた。その上で、同僚や保護者、児童・生徒との信頼関係の構築や、同僚と対等な関係を築くことが必要であると述べた。
現役教員5人によるシンポジウムでは、働く際の課題として、小学校や高校に勤めている教員からは、視覚に障害のない生徒の学習方法の理解や同僚との価値観の埋め合わせなどが課題として挙がった。
中学校の教員は、校務分掌など、「私がやります」となかなか言い出せず、周囲も何をさせていいのか分からない様子だったが、周囲との関係の中で少しずつ仕事の幅を広げることができるようになったという。
視覚障害者の疑似体験学習を通して、障害があっても段取りを立てて計画するなどができると他の教員に気付いてもらったり、他の教員と交流する中で自分がやりたいことを話して協力を得たりして仕事の幅を広げていった。
遠足の際は、他の教員に手を引いてもらうので、手を煩わせるなら行かない方がいいのではと考えたこともあった。しかし、参加してみてバスの手配や事前の授業など引率以外の業務なら自分でもできると気付いたという。
特別支援学校に勤務している教員は、視覚が失われた当初、一人でできないことを誰に頼めばよいか分からなかった。その後、担当する教科が同じ教員から採点などを手伝ってもらったりした。
この教員は、児童・生徒の教材の音訳や点訳のボランティアとの窓口になるなど自分ができることを見つけていくことが大事だとも語った。
同団体では記念誌「together」を発行し、全国の関係者や教育委員会などに配布する。